「人事の経験を活かして独立したいけれど、それで生活していけるだろうか」。フリーランス人事という働き方に関心はあっても、収入の見通しが立たずに一歩を踏み出せない人は少なくありません。
先にお伝えすると、この働き方の収入は「平均年収」ではなく、稼働日数と単価の掛け算で決まります。週1日から本業と並行する人もいれば、複数社を掛け持ちして会社員時代の水準を超える人もいる。振れ幅が大きいのは、そこに理由があります。
この記事では、仕事内容と案件の探し方に加えて、2024年11月に施行されたフリーランス新法で発注者に義務づけられた内容まで整理しました。読み終えるころには、自分がいつ、どの入口から動けばよいのかを判断できる状態になります。
フリーランス人事とは?正社員との違い

フリーランス人事とは、企業の人事業務を業務委託で請け負う個人のことです。1社に雇用されるのではなく、案件ごとに契約を結んで採用や労務、制度づくりを支えます。
呼び名は同じでも、独立した個人事業主もいれば、会社員として働きながら副業で人事案件を受けている人もいる。ここではまず、仕事の全体像と雇用形態ごとの違いを押さえておきましょう。
フリーランス人事の仕事の全体像
フリーランス人事の契約形態は、ほとんどが業務委託です。業務委託は、社員として雇われるのではなく、決められた業務や成果物だけを引き受ける契約の形を指します。
社員ではないため、その会社の福利厚生は受けられません。一方で、働く場所や時間の裁量は大きくなるのが特徴です。出社が求められない案件も多く、複数の会社の仕事を並行しながら好きな場所に住むという選択もできます。
企業側が外部に任せる理由は、大きく2つあります。社内に人事の専任者を置けない場合と、採用や制度設計のように専門性の高い領域だけを切り出したい場合。どちらも「人手が足りない」ではなく「その分野の経験がある人に任せたい」という発注になりやすいのが特徴です。
そのため、案件の中身は企業のニーズに合わせて柔軟に組み立てられます。週1日の採用面接だけを担う契約もあれば、半年かけて評価制度をつくり直す契約もある。関わり方の幅広さが、この働き方の入口を広くしています。
案件は、クラウドソーシングや人事専門のエージェントサービスを通じて探すのが一般的です。

フリーランス・正社員・派遣社員の違い
3つの働き方の差は、雇用契約があるかどうかに集約されます。指揮命令を受けるか、収入がどう決まるか、社会保険を誰が負担するか。この3点を並べると輪郭がはっきりします。
| 比較する項目 | フリーランス人事(業務委託) | 正社員 | 派遣社員 |
|---|---|---|---|
| 契約の形 | 企業と業務委託契約を結ぶ | 企業と雇用契約を結ぶ | 派遣会社と雇用契約を結ぶ |
| 指揮命令 | 受けない(業務の進め方は自分で決める) | 受ける | 派遣先から受ける |
| 収入の決まり方 | 稼働日数と単価の掛け算。案件数で増やせる | 月給・賞与。就業規則で上限が決まりやすい | 時給×勤務時間 |
| 社会保険 | 独立した場合は国民健康保険・国民年金に自分で加入し全額負担(会社員のまま副業で受けるときは勤務先の社会保険が継続) | 会社と折半 | 派遣会社と折半 |
| 契約の終わり方 | 契約期間の満了または解除。6か月以上の継続案件は30日前の予告が必要 | 解雇には厳しい制限がある | 派遣契約の期間満了 |
収入の欄に注目してください。伸ばせる余地と引き換えに、社会保険の負担が重くなる。ここがこの働き方を選ぶかどうかの分かれ目です。
企業から見ると、正社員の採用には給与のほかに社会保険の会社負担分や福利厚生費がかかります。業務委託なら委託費だけで済むため、コスト構造が軽くなる。
働く側の裁量と、企業側のコスト構造。この2つがかみ合ったところに、この働き方の需要があります。

会社に勤めながら働く「複業人事」という選び方
独立が前提ではありません。会社員として働きながら、月に数日だけ他社の人事業務を受ける「複業人事」も増えています。
この入り方には利点があります。本業の収入を保ったまま、社外で通用するかどうかを試せる。案件の相場感や、自分の得意領域がどこにあるのかも、実際に受けてみないと見えてきません。
ただし、勤務先の就業規則との関係は事前に確認が要ります。どこまでが有効な制限なのかは、この記事の「会社員のまま人事の副業を始める注意点」で詳しく扱いました。

フリーランス人事の仕事内容と業界別の案件

業務委託で発注される人事の仕事は、大きく4つに分かれます。採用代行、人事制度設計、労務、研修・組織づくり。案件情報サイトで見かける範囲では、採用代行が入口になりやすい領域です。
それぞれ求められる経験も、契約の長さも違います。順に見ていきましょう。
採用代行(RPO)
採用代行は、採用業務の一部または全体を外部が引き受ける仕事です。業界ではRPO(Recruitment Process Outsourcing)とも呼ばれています。
求人原稿の作成、スカウト配信、書類選考、面接日程の調整、面接そのものまで、担当範囲は契約によってさまざま。母集団づくりだけを任される案件もあれば、内定承諾までを一貫して見る案件もあります。
入社後のフォローまで含む契約も見かけます。入社時研修の設計や、定着に向けた面談の運用まで踏み込むケースです。定着率という数字で成果を測りやすいため、継続契約につながりやすい領域でもあります。
採用を担当する人事の業務委託に関する詳しい情報は、「採用を担当する人事の業務委託とは?フリーランスにおすすめの案件獲得のコツを紹介!」の記事でも扱っています。

人事制度設計
人事制度設計は、評価制度や等級制度、昇進・昇格の基準、福利厚生の枠組みを組み立てる仕事です。制度を新設する案件と、運用が形骸化した制度を組み直す案件の2種類があります。
設計して終わりにはなりません。運用が始まってからの調整こそ本番で、評価者の目線合わせや、社員からの異議への対応が求められます。より働きやすい環境を整備できるところまで伴走する契約も珍しくありません。
その企業の理念や事業構造への理解が欠かせない領域です。同じ評価制度でも、成果が数字で出る営業組織と、時間のかかる研究開発組織では設計が変わってきます。課題を聞き取ったうえで、その会社に合う形へ落とし込む力こそが評価の分かれ目です。
単価は4つの領域のなかでも高めに設定されやすく、月20時間程度の関与でまとまった報酬が提示される案件も見かけます。その分、募集では事業会社で制度を運用した経験が条件に挙がりがちです。

労務
労務は、働く環境を整えて運用する仕事です。勤怠管理、給与計算、社会保険の手続き、就業規則の整備などが含まれます。
法改正への対応も、この領域の仕事です。労働時間の上限規制や育児介護休業法の改正があれば、社内規程を直し、運用を切り替える必要が出てきます。トラブルが起きたときの一次対応を任される場面もあるでしょう。
注意したいのは資格の壁です。社会保険や労働保険の手続き代行に加えて、就業規則など法定帳簿書類の作成も社会保険労務士の独占業務にあたります。一方、制度づくりの相談や助言にあたる部分は、資格がなくても引き受けられます。
未経験から労務案件だけで組み立てるのは難しく、まずは実務の一部を支える形から入るのが現実的でしょう。
研修・組織づくり
研修は、社員のスキルや行動を引き上げるために設計します。社員のスキルアップを図るだけでなく、組織の状態を変えるための打ち手として発注されるのがこの領域です。
内容は新人研修、管理職向けのマネジメント研修、評価者研修、コミュニケーション研修と幅があります。近年は、企業理念や行動指針を社内に浸透させる案件、従業員エンゲージメントを高める施策の設計といった依頼も増えました。
研修は成果が見えにくいと思われがちですが、受講後のアンケートや行動変容の指標を設計に含めておけば、効果を説明できます。数字で語れる状態にしておくと、次の契約につながりやすくなるはずです。
業界別の案件の傾向

同じ採用代行でも、対象となる業界によって求められる知識は変わります。案件情報サイトでよく見かける3つの業界を並べました。
| 業界 | 主に任される仕事 | 求められる知識・経験 | 案件の特徴 |
|---|---|---|---|
| エンジニア採用(IT) | 求人票の作成、スカウト配信、書類選考、技術者との面接同席 | 開発言語や職種区分の理解。技術者と会話できる語彙 | 採用難易度が高く、経験者は継続依頼を受けやすい |
| コンサルティング業界 | コンサルタントの採用、育成プログラムの設計、プロジェクト管理 | 論理的な選考基準の設計。ハイレイヤー採用の経験 | 選考基準が細かく、評価設計まで含む依頼が多い |
| マーケティング業界 | マーケターの採用、人員配置、育成企画 | 職種ごとの役割理解(広告運用・CRM・コンテンツ等) | 職種の細分化が進み、要件定義から関わる案件が多い |
とくにエンジニア採用は、担当者がエンジニアリングに明るくないと候補者の力量を測れず、現場との接続もうまくいきません。採用に苦戦した企業が、業界に詳しい人事を業務委託で迎えるという動きにつながっています。人材確保の難しい分野だからこそ、この業務を担える人事は継続の依頼につながりやすい立場にあります。
コンサルティング業界とマーケティング業界では、求人票を書く前の要件定義から相談されることも少なくありません。事業への理解が、そのまま単価に跳ね返る領域です。
採用面接の代行については、「採用面接の代行を業務委託で受注するには?フリーランス・副業向けの案件獲得のコツ」の記事でさらに掘り下げました。
フリーランス人事の年収・単価相場

フリーランス人事の収入は、年収ではなく「稼働日数×単価」で決まります。週1日の契約を1本だけ持つ人と、週3日の契約を2本回す人では、同じ職種でも年収が数倍変わります。
だからこそ、平均年収という数字だけを見ても判断材料になりません。まず押さえるべきは、どんな条件の案件がいくらで募集されているかという実例です。
稼働条件別の月額の例
同じ人事の案件でも、週1日で月40万円台の募集があれば、月30時間で月20万円の募集もあります。まずは実例を見てください。
人事に特化した案件紹介サービス「人事プロパートナーズ」のサイトを見てみます。「案件の事例」として稼働条件と月額が掲載されているので、そこから6件を抜き出しました(出典:人事プロパートナーズ 掲載案件/2026年8月時点)。
| 案件の内容 | 稼働条件 | 月額(掲載表記) |
|---|---|---|
| 採用戦略の立案 | 週1日 | 月給40〜50万円 |
| 評価制度の見直し | 平日の夜 | 月給30万円 |
| リモートでのスカウト業務 | 日数・時間は不問 | 月給20万円 |
| 労務 | 週2日 | 月給30万円 |
| MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透支援 | 月20時間程度 | 月給40〜50万円 |
| エンゲージメント施策の設計 | 月30時間程度 | 月給20万円 |
この表は1つのサービスの掲載例であり、業界全体の相場を示すものではありません。ただ、条件の並び方から読み取れることが2つあります。
1つは、稼働日数と報酬が単純な比例関係にはなっていないこと。週1日の採用戦略が月40万円台で、月30時間のエンゲージメント施策が月20万円。この並びが示すのは、時間よりも担当領域の難易度が値づけを左右しているという事実です。
もう1つは、平日の夜や時間不問という条件の事例が示されている点です。会社員を続けながら関われる形の案件も想定されているため、独立を決める前に試す余地は残されています。
単価はどのように決まるのか
業務委託の報酬は、1週間あたりの稼働日数と業務の難易度をもとに決まるのが一般的です。ただし表③のような公開事例を並べてみると、同じ週1日でも金額の幅は大きく開きます。
ここに上乗せが効くのは、代わりが見つかりにくい領域を担うときです。エンジニア採用、評価制度の設計、労務の法改正対応。いずれも社内で完結させにくく、経験者への依存度が高い仕事にあたります。
この領域は「平均年収は◯万円」という数字がひとり歩きしがちです。ただ、その数字が週何日の稼働を前提にしているのかが示されていなければ、自分の見込みには使えません。確認すべきは平均値ではなく、稼働条件と単価がセットで書かれた募集要項です。
なお、企業がエージェント経由で人事を探す場合は、報酬とは別に紹介手数料がかかります。発注側の予算は紹介手数料を織り込んで組まれるため、提示される単価にもその分が反映されがちです。
年収を上げる3つの打ち手
稼働日数を増やす以外にも、単価そのものを引き上げる方法があります。取り組みやすい順に3つ紹介しましょう。
自己ブランディングの強化
自己ブランディングというと身構えてしまいますが、中身は実績の言語化です。「採用担当5年」ではなく「エンジニア採用で年間12名の入社、書類通過率を18%から31%へ」。こう書けるかどうかで、提示される単価は変わります。
担当した施策と、その前後の数字はセットで残しておいてください。
職務経歴書とは別に、案件用の実績サマリーを1枚用意しておいてください。商談の進み方が変わるはずです。
ネットワーキングの拡大
ネットワーキング、つまり人とのつながりを広げる動きも報酬に効いてきます。人事領域の勉強会やSNSでの発信は、次の案件の入口になります。募集が公開される前に声がかかる案件は、条件面で交渉しやすいのが実情です。
過去の取引先からの再依頼も同じ性質を持ちます。契約が終わるときに「またお願いしたい」と言われる状態をつくっておきたいところ。
スキルのアップデート
採用代行から評価制度へ、労務から組織開発へと、隣接領域を1つ増やすと受けられる案件の幅が変わります。専門書やオンライン講座で知識を補いながら、小さな案件で実務経験を積むのが近道です。
複数領域を一気通貫で見られる人は、企業から見れば発注先を1本化できる相手になります。そこに単価の差が生まれるわけです。

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働く人・企業それぞれのメリットとデメリット

働く人にとっての最大の利点は稼働を自分で設計できること、最大の負担は収入の不安定さです。企業にとっては、固定費を抱えずに専門性を借りられる代わりに、ノウハウが社内に残りません。
同じ働き方でも、受ける側と発注する側では見えている景色が違います。両方の目線を並べておくと、どちらの立場でも交渉しやすくなるはずです。
【働く人目線】フリーランス人事のメリット
最大の利点は働き方を自分で設計できることです。稼働日数も、受ける案件の領域も、自分の判断で決められます。
リモート前提の案件が多いため、通勤に費やしていた時間がそのまま手元に戻ります。家庭の事情に合わせて稼働を調整しやすくなるのも、この働き方が選ばれる理由の1つ。
収入面では上限が外れます。正社員は給与テーブルの枠内に収まりますが、業務委託は案件数と単価の掛け算。経験を積むほど、伸ばせる余地が広がっていきます。
もう1つ見落とされがちなのが、経験の幅です。1社に留まっていれば1社分の人事しか見られません。
複数社に関わると、規模も業種も異なる組織の課題に触れられます。この蓄積こそが、次の案件を取るときの武器です。
「人事フリーランスのメリットとは?必要なスキルや案件獲得方法も紹介」の記事では、メリットの中身をさらに深掘りしています。
【働く人目線】フリーランス人事のデメリット
自由さの裏側には、自分で引き受けなければならない負担があります。代表的なものを3つ見ていきましょう。
収入が不安定
契約が切れれば、その分の収入はなくなります。自分から仕事を取りに行かなければ翌年の見通しが立たないのは、業務委託で働く以上つきまとう課題です。
ただ、2024年11月に施行されたフリーランス新法により、状況は以前より読みやすくなりました。6か月以上続く契約を打ち切る場合の決まりがあります。発注者は少なくとも30日前までに予告しなければならないとされています(同法第16条)。
翌月からいきなり収入がゼロになる、という事態は起こりにくくなったわけです。予告を受けてから次を探す30日間を、どう使うかが分かれ目になります。
健康保険や年金の面での不安
会社員時代は社会保険料の半分を会社が負担していました。独立後は国民健康保険と国民年金に自分で加入し、全額を自分で払います。
将来受け取る年金額も、厚生年金がなくなる分だけ低くなるでしょう。国民年金基金やiDeCo、小規模企業共済といった上乗せの制度を早めに検討しておくと、老後の不安を減らせます。
仕事を見つけることが難しい
実務に加えて、営業と契約手続きの時間が必要です。スキルや実績をうまく伝えられなければ、経験があっても案件につながりません。
この負担を軽くする方法は2つあります。継続契約を1本確保して土台にすること、そして案件を紹介してくれるサービスに登録して探す手間を外に出すことです。
人事に特化したエージェントサービスを使う方法もあります。人材紹介型のエージェントは企業側から手数料を受け取る仕組みのため、仕事を探す側は費用をかけずに使えるのが一般的です。
【企業目線】業務委託を依頼するメリット
発注側の利点は2つです。人件費の構造が軽くなること、そして必要な期間だけ専門性を借りられること。

人件費を安く抑えられる
正社員を1人採用すると、給与のほかに社会保険の会社負担分、福利厚生費、採用コストがかかります。業務委託なら依頼した業務に対する委託費だけで済むため、固定費を抱え込まずに運用できるのが利点です。
部分的な仕事を短期で任せられる
採用の繁忙期だけ、制度を作り直す半年だけ、といった区切り方ができます。社内にいない経験を、必要な時期に必要な量だけ調達できるのが業務委託の強みです。
土日にできる人事の副業について知りたい人は、「土日(週末)にできる人事の副業とは?無理なく稼げる業務委託の探し方とダブルワークのコツ」の記事も読んでみてくださいね。
【企業目線】業務委託を依頼するデメリット
負担も2つに集約されます。ノウハウが社内に残らないことと、成果物の粒度がぶれやすいことです。
社内にノウハウが蓄積しない
外部に任せた業務の知見は、契約終了とともに社外へ出ていきます。議事録や手順書を社内に残す取り決めを契約に含めておくと、この欠点はある程度まで埋められるはずです。
業務の品質にムラが出やすい
複数社と契約している人ほど、1社あたりの事業理解に割ける時間は短くなりがちです。業務への理解が浅いまま進むと、成果物の粒度がぶれることがあります。
対策は発注の設計側にあります。期待する成果物を最初に文章で定義し、隔週で認識をすり合わせる場を設ける。この2つを実行するだけで、ばらつきは大きく減ります。
最後に、契約を始める前に双方が決めておきたいことを表にまとめます。
| 観点 | 働く人が先に決めておくこと | 企業が先に決めておくこと |
|---|---|---|
| お金 | 受けられる下限の単価と、収入が途切れたときの生活費の備え | 依頼範囲に対する予算と、成果をどの数字で測るか |
| 時間 | 同時に持てる案件数と、稼働できる曜日・時間帯 | 依頼する期間と、稼働時間の上限 |
| 知識の蓄積 | 案件ごとに実績をどう記録して残すか | 社内で受け皿になる担当者を1名決めておく |
| 品質 | 成果物の定義をどこまで文章にしてもらうか | 検収の基準と、修正依頼の回数の上限 |
人材を探す方法も、自社で募集をかけて集まった人から選ぶだけではありません。人事に特化したエージェントを間に入れれば、経歴を確認したうえで紹介を受けられる場合もあります。
フリーランス新法で守られる7つのこと
この法律で守られるのは、条件を書面でもらう、報酬を60日以内に支払ってもらう、6か月以上続いた契約なら終了を30日前に知らされる——といった7つのことです。
2024年11月1日、業務委託で働く人を守るための法律が施行されました。正式名称は特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)。フリーランス・事業者間取引適正化等法、いわゆるフリーランス新法と呼ばれています。
この法律が定めているのは、発注する側が守るべきルールです。裏を返せば、受ける側が「これはおかしい」と言える根拠がそろったことになります。
以下の内容は、e-Gov法令検索で公開されている条文と、公正取引委員会のフリーランス法ページで確認したものです。
守られるのはどんな人か
法律が保護する対象は「特定受託事業者」と呼ばれます。第2条第1項の定義はシンプルで、次の2つのどちらかにあたる人です。
- 個人であって、従業員を使用しないもの
- 法人であって、代表者1名以外に役員がなく、従業員も使用しないもの
ここで誤解が起きやすいのは2つ目です。法人化していても、役員が自分1人で従業員を雇っていなければ、この法律の保護対象に入ります。「個人事業主だけの法律」ではありません。
会社員として働きながら副業で案件を受ける場合も、その業務委託契約については同じ枠組みで扱われます。独立しているかどうかではなく、受注する側の事業の形で決まると考えてください。
発注者に義務づけられた7つのこと
7つのうち、まず覚えておきたいのは3つです。書面での条件明示、受領日から60日以内の支払い、そして30日前の解除予告。
発注者側に課された義務を、根拠となる条文と、自分の契約のどこを見ればよいかをセットで整理しました。
| 義務の内容 | 根拠となる条文 | 自分に関係する場面 |
|---|---|---|
| 業務委託をしたら直ちに、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示する | 第3条第1項 | 依頼を受けた直後。条件が書かれた書面やメールが届いているか |
| 報酬の支払期日を、給付を受領した日から起算して60日以内かつできる限り短い期間内に定める | 第4条第1項・第2項 | 契約書の支払サイト。定めがない場合は受領日が支払期日とみなされる |
| 受領拒否・報酬の減額・返品・買いたたき・購入や利用の強制をしない(1か月以上の業務委託が対象) | 第5条第1項、施行令第1条 | 「予算が減ったので報酬を下げたい」と後から言われたとき |
| 募集情報に虚偽や誤解を生む表示をせず、正確かつ最新の内容に保つ | 第12条、施行令第2条 | 案件募集に書かれた報酬・稼働・契約解除の条件が実際と食い違うとき |
| 6か月以上の継続的業務委託では、申出に応じて妊娠・出産・育児・介護と両立できるよう配慮する(6か月未満の委託は努力義務) | 第13条、施行令第3条 | 通院や送り迎えのために稼働時間をずらしたいと申し出るとき |
| ハラスメントの相談に応じる体制を整え、相談を理由に不利益な扱いをしない | 第14条 | ハラスメントを相談したあと、契約を切られないか不安なとき |
| 6か月以上の継続的業務委託を中途解除・不更新にするときは、少なくとも30日前までに予告する | 第16条 | 「来月で終了」と急に告げられたとき。理由の開示も請求できる |
1点だけ補足します。2〜7は、発注者が「特定業務委託事業者」である場合の義務です。特定業務委託事業者とは、従業員を使う個人か、役員が2人以上いるか従業員を使う法人を指します。
取引条件の明示だけは、すべての発注者に課されています。
実務でいちばん効いてくるのは、2行目の支払期日です。「月末締め翌々月末払い」という条件は、受領日から数えて60日を超える月が出てきます。この場合、受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。
1行目の明示義務も見逃せません。チャットで「これお願いします」と依頼され、報酬も納期も決まらないまま着手する。よくある場面ですが、条件を明示しないまま進めるのは発注側の義務違反にあたり得ます。
7行目の予告義務は、収入の見通しに直結します。6か月以上続いている契約なら、終了の30日前までに知らされる。
そのうえで、なぜ終わるのかの開示を請求する権利も認められています。ただし災害などやむを得ない事情がある場合には、例外も定められています。
契約前にチェックしたい4項目
条文を覚える必要はありません。契約書や条件通知書を受け取ったら、次の4点だけ確認してください。
- 業務の範囲と成果物が書面に残っているか(口約束のまま着手していないか)
- 報酬額と支払期日が明記され、受領日から60日以内に収まっているか
- 契約期間と、途中で終了する場合の予告方法が決められているか
- 修正対応や追加依頼の扱い(回数・追加報酬の有無)が決まっているか
4項目のうち1つでも空欄なら、着手前に質問しておきたいところ。交渉というより、法律が発注者に求めている内容の確認にあたるため、切り出しにくい話ではありません。
やり取りの記録も残しておきましょう。条件の変更がチャットだけで進むと、あとから経緯を示せなくなります。
困ったときの相談先
報酬が支払われない、契約と違う作業を求められた。そうした場面では、フリーランス・トラブル110番に相談できます。第二東京弁護士会が運営する無料の相談窓口で、公正取引委員会のフリーランス法ページでも案内されている相談先です。
行政に動いてもらいたいときは、申し出るという道もあります。取引条件の明示・支払期日・禁止行為(第3条〜第5条)に関することなら、窓口は公正取引委員会か中小企業庁長官です(同法第6条第1項)。
募集情報の表示や育児・介護への配慮、ハラスメント対策、30日前の予告(第12条〜第16条)は、厚生労働大臣への申出になります(同法第17条第1項)。
どちらの場合も、申し出たことを理由とする不利益な取扱いは禁じられています(第6条第3項・第17条第3項)。
発注者が自ら設けたハラスメントの相談窓口に相談した場合も同じです。それを理由とする契約解除などは、第14条第2項で禁止されています。泣き寝入りする前に、まず状況を整理して持ち込むという選択肢を覚えておいてください。
\ 最短1週間で業務委託が見つかる /
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会社員のまま人事の副業を始める注意点
人事の仕事は、会社員を続けながらでも始められます。ただし人事という職種だからこそ、注意しておきたい論点があります。
就業規則との関係、扱う情報の性質、勤務先への伝え方。この3点を順に見ていきましょう。
副業は原則自由。会社が制限できる4つの場合
就業規則に副業禁止と書かれていても、その効力が及ぶ範囲は限られています。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、裁判例をふまえて次のように整理しています。労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であり、企業がそれを制限できるのは限られた場合だという考え方です。
ガイドラインは「例えば」として、次の4つを挙げています。限定列挙ではない点にご注意ください。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏洩する場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
同じガイドラインは、厚生労働省が平成30年1月に改定したモデル就業規則についても触れています。そこには「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」という条文が置かれました(出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」3ページ)。
なお、厚生労働省が公開している最新のモデル就業規則には続きがあります。事前の届出を求めたうえで、上の4つのような場合には禁止または制限できるという規定です。
つまり、就業規則に副業禁止と書かれていても、4つの場合にあたらない副業まで一律に止められるとは限りません。確認すべきは「禁止か否か」ではなく、自分がやろうとしている案件が4つのどれかに触れるかという点になります。
人事職がとくに注意したい秘密保持と競業避止
4つの場合のうち、人事職が引っかかりやすいのは②と③です。理由は、扱う情報の性質にあります。
人事は社員の個人情報、給与や評価のデータ、選考中の候補者情報を日常的に見ています。職種として、②の「業務上の秘密」に最も近い場所で働いているわけです。副業先で自社の給与テーブルや選考基準をそのまま持ち出せば、秘密保持の問題に直結します。
③の競業も他人事ではありません。同じ業界の企業から採用支援を頼まれた場合、自社が採りたい人材を副業先に紹介する構図が生まれかねない。採用市場では、同業他社は人材の取り合いをしている相手にあたります。
前掲のガイドラインは、労働者側の留意点にも触れています。職務専念義務・秘密保持義務・競業避止義務を意識する必要がある、という指摘です(同4ページ)。人事にとっては、この3つがそのまま案件選びの基準になります。
実務的な線引きはこうなります。自社と採用競合にならない業界を選ぶ。持ち出すのは経験と手法であって、データや文書ではない。
この2つを守れば、②と③に触れる場面はかなり減らせます。場面ごとに整理すると、線引きはもう少しはっきりします。
| 場面 | 避けたい行動 | 問題になりにくい行動 |
|---|---|---|
| 選考基準・評価制度 | 自社の評価シートや選考基準の文書を副業先に持ち込む | 自分が設計に関わった考え方を、自分の言葉で説明する |
| 候補者の情報 | 自社で選考中の候補者リストを副業先の採用に使う | 公開されている求人媒体の情報をもとに母集団をつくる |
| 受ける業界 | 自社と人材を取り合う同業他社の採用支援を受ける | 採用競合にならない業界・職種の案件を選ぶ |
| 稼働の時間帯 | 深夜や早朝まで稼働して本業の集中力を落とす | 稼働時間の上限を決め、本業の繁忙期は受注しない |
会社にどう伝えるか
勤務先が副業を認めている場合は、社内の手続きに沿って申請しましょう。申請の窓口は人事部であることが多く、自分が人事なら書式も運用も把握しているはずです。
伝え方には型があります。口頭で切り出したうえで、メールや申請書に文章として残す。この二段構えにしておくと、あとから認識の食い違いが起きません。
説明に入れておきたいのは次の3点です。
- 副業の業務内容と、1か月あたりのおおよその稼働時間
- 本業への影響をどう抑えるか(稼働する時間帯と上限)
- 勤務先と採用で競合しない相手であること
先ほどの4つの場合に触れないと示せれば、話は通りやすくなります。申請書に書く一文なら、次のような形です。
「勤務時間外に、当社と採用で競合しない◯◯業界の企業に対して、採用実務の支援を月◯時間程度行います。稼働は平日夜と土日に限り、本業の繁忙期は受注しません。」
週1日から始めるなら、平日夜や土日に稼働できる案件を選ぶと本業との衝突を避けられます。同じスキルでも、応用する分野が変われば見える景色は大きく変わるもの。新しい環境で自分の力を試してみてください。
人事の副業については、「人事経験者におすすめの副業は?案件を獲得する方法とおすすめのサービスを紹介」の記事でさらに詳しく扱っています。
フリーランス人事になるには?案件の探し方

フリーランス人事になるために必要な資格や許認可はありません。案件を1本受けた時点で、あなたはフリーランス人事です。
ただし、個人で事業として始めるなら税務署への届出が要ります。「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる開業届の提出です(所得税法第229条)。
とはいえ、勢いで会社を辞めるのは避けたいところ。判断の目安と、案件の探し方を順に見ていきます。
独立前に確認したい3つの目安
独立の時期を判断する材料は、意欲ではなく事実で持っておきたいところです。次の3つが揃っているかを確認してください。
- 1人で最後まで回せる業務が1つある(採用代行・制度設計・労務のいずれか)
- 実績を数字で説明できる(採用人数・通過率・工数削減など)
- 収入が途切れても半年は暮らせる生活費を確保できている
3つ目を軽く見ないでください。フリーランス新法が定める支払期日の上限は受領日から60日以内で、着手から入金までは間が空きます。独立直後の収支は沈むものと考えておきましょう。
生活費の余力が、単価交渉で足元を見られないための土台にもなります。
1つ目と2つ目に不安が残るなら、会社員のまま副業で1本受けてみるのが安全です。実際に発注される仕事の粒度と、自分の通用する範囲が見えてきます。
フリーランス人事に必要なスキル

社内の人事と違い、外部から入る立場では前提が共有されていない状態からのスタートです。求められる力は4つに整理できます。
人事業務に関する知識
採用、評価、育成、労務。担当する領域について、制度の背景まで説明できる深さが要ります。「前職ではこうしていた」だけでは、事情の違う会社では通用しません。
コミュニケーション能力
社外の人間が人事に関わる以上、信頼を得るまでの速度が成果を左右します。現場の管理職、経営層、候補者と、相手に応じて話し方を変える必要も出てきます。
とくに大切なのは、人事に関する情報を正確に伝える姿勢です。評価や処遇の話は、伝え方ひとつで受け取られ方が変わります。
プロジェクトマネジメント能力
複数社の案件を並行して進めるため、スケジュールと優先順位の管理が欠かせません。締切、面接の日程、制度改定の社内周知。動く要素が多いほど、段取りの質が成果に直結します。
自分の稼働時間を把握して、受けられる案件量を見積もる力もここに含まれます。
案件獲得のための営業力
実務がどれだけできても、依頼が来なければ仕事になりません。自分の強みを一言で説明し、相手の課題に合わせて提案できるかが問われます。
この力に自信がないうちは、エージェントに間に入ってもらうのが現実的な選択です。

案件の探し方4パターン
案件を見つける経路は大きく4つ。それぞれ向き不向きがあるため、自分の状況に合うものから始めてください。
| 探し方 | 特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 人事特化のエージェント | 条件の交渉や契約手続きを間に入って進めてくれる。働く側の費用負担は原則なし | 独立したて。単価の相場感がまだない人 | 登録して案件を見るまでに面談が入る |
| クラウドソーシング | 小さな業務単位の募集が多く、すぐ応募できる | 副業で実績づくりから始めたい人 | 単価が低めになりやすく、手数料も差し引かれる |
| 知人・元同僚からの紹介 | 信頼が前提にあるため、条件を交渉しやすい | 社内外に人脈がある人 | 断りにくく、条件が曖昧なまま進みやすい |
| SNS・直接営業 | 公開前の案件に出会える。中間手数料がかからない | 発信を続けられる人。提案資料を作れる人 | 成果が出るまで時間がかかる |
最初の1本を早く取りたいなら、人事に特化したエージェントサービスから入るのが近道です。案件を紹介してもらいながら、提示される単価の水準を知ることができます。
高い単価の案件に出会うには、複数の案件を見比べられる状態に身を置くことが欠かせません。1社の提示だけを見ていると、その条件が高いのか低いのか判断できないからです。
まずは人事に特化したエージェントサービスに登録し、どのような案件が動いているのかを眺めてみましょう。企業側から手数料を受け取る仕組みのエージェントなら、仕事を探す側の費用負担は原則ありません(費用の扱いは各サービスの規約をご確認ください)。カウンセリングから契約までを支えてもらえます。

未経験から始めるなら
人事の実務経験がまったくない状態から案件を取るのは簡単ではありません。ただ、入口が閉じているわけでもない。
狙い目は、専門判断より作業量が求められる業務です。スカウトメールの送信、面接日程の調整、応募者への一次連絡。これらは採用実務の入口にあたり、経験不問の条件で募集されているのを見かける領域です。
ここで実績を積んでいくと、書類選考や面接同席まで任される流れも見えてきます。数をこなすほど知識も判断の精度も上がるため、まずは小さな案件から挑戦してみましょう。
会社員の方が副業として始める場合は、勤務先の規定と、先ほどの4つの場合に触れないかを先に確認してくださいね。
\ 最短1週間で業務委託が見つかる /
審査通過率20%程度の厳選した人事に特化してご紹介します。
フリーランス人事に関するよくある質問
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まとめ
フリーランス人事は、稼働日数と単価の設計しだいで収入の形が変わる働き方です。押さえておきたい要点を整理します。
- 収入は平均年収ではなく「稼働日数×単価」で決まる
- 仕事は採用代行・人事制度設計・労務・研修の4領域に分かれる
- フリーランス新法で、支払期日は受領日から60日以内、6か月以上の契約の打ち切りは30日前予告と定められた
- 会社員の副業は原則自由。制限が許されるのは例示された4つのような場合
今日できる行動は2つあります。1つは、手元の契約書を開いて「業務範囲・報酬額・支払期日・解除の予告」の4点が書かれているかを確かめること。もう1つは、案件の探し方4パターンから自分に合う経路を1つ選び、登録まで済ませておくことです。
条件を比べられる状態をつくれば、単価も働き方も自分で選べるようになります。まずは動いている案件を眺めるところから始めてみてください。






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