「人事に憧れはあるけれど、自分に向いているのか分からない」。そう感じたまま、次の一歩を決めきれずにいる方は少なくありません。人事に向いている人には、性格の良し悪しよりも「仕事の進み方に耐えられるか」という共通点があります。
判断の軸は6つあります。秘密を守り抜ける、陰で支える立場に満足できる、公平に判断できる、厳しい決定から逃げない、複数の予定を並行して回せる、人に好かれやすい。この6つを軸に考えると、判断がぶれにくくなります。
この記事では向いていない人の特徴に加えて、厚生労働省の統計が「庶務・人事事務員」として集計した給与・残業・勤続年数まで整理しました。読み終えるころには、人事を目指すか別の道を選ぶかを、自分の言葉で決められる状態になります。
人事の仕事とは?採用・労務・制度企画の3領域
人事の仕事は、大きく採用・労務・制度企画の3領域に分かれるのが基本です。同じ人事部でも、どの領域を担当するかで1日の中身は大きく変わります。
向き不向きを考えるときは、3領域のどれを指しているのかを先に決めると判断がぶれません。まずは業務の全体像を表で押さえてください。
| 領域 | 主な業務 | 関わる相手 | 成果が見えるまでの時間 |
|---|---|---|---|
| 採用 | 求人票の作成、説明会、面接、内定者フォロー | 求職者、現場の管理職、人材紹介会社 | 数か月〜1年 |
| 労務 | 入退社の手続き、勤怠管理、給与計算、社会保険 | 社員、年金事務所などの行政機関、顧問社労士 | 毎月(締め日ごと) |
| 制度企画 | 評価制度の設計、等級・報酬の見直し、研修の企画 | 経営層、管理職、社員全体 | 1年〜数年 |
採用:母集団づくりから内定フォローまで
採用は、応募者が集まる入口をつくり、入社の意思決定まで伴走する仕事です。求人票の文言、説明会の運営、面接の日程調整、内定後の連絡までが守備範囲になります。
現場の管理職から「こういう人がほしい」と要望を受け、募集条件という形に翻訳する場面も多くあります。要望のまま募集すると応募が集まらないため、条件をどこまで緩めるかを一緒に決める役回りです。
成果は採用できた人数で語られがちですが、入社した人が活躍して初めて成功と言えます。判断が正しかったかが分かるまでには、数か月から1年ほどかかるでしょう。
労務:入退社の手続きと勤怠・給与
労務は、働く条件を法律と社内ルールのとおりに保つ仕事です。入社手続き、社会保険、勤怠の集計、給与計算、退職手続きが毎月決まった周期で回ります。
締め日と支給日が動かないため、忙しくなる時期を読みやすいのが特徴です。一方で、ミスが社員の生活に直結するので、正確さに求められる水準は3領域のなかで最も高くなります。
法改正のたびに運用を変える必要があり、調べた内容を社内に伝えるところまでが担当範囲です。
制度企画:評価制度と教育研修の設計
制度企画は、会社のなかの評価・報酬・育成の仕組みをつくり替える仕事です。等級制度、評価シート、研修の体系などを設計し、運用に乗せるところまで見届けます。
社員を役割の段階に分ける等級制度のように、経営層の意図を聞き取って現場が運用できる形へ落とし込むのが腕の見せどころになります。合意形成に時間がかかるため、成果は1年単位で見るものと考えてください。
3領域のなかでは最も抽象度が高く、数字で成果を示しにくい領域でもあります。
人事・総務・労務はどう違うのか
人事は人に関する意思決定、総務は会社の設備や庶務、労務は労働条件の管理と分けると整理しやすくなります。ただし、この線引きは会社によってずれるのが実情です。
中小企業では1人が3つを兼ねることが多く、「人事総務」という名前の部署も珍しくありません。国の統計でも庶務と人事は「庶務・人事事務員」というひとつの職種として集計されており、実務でも近い距離にあります。
そのため、求人票を見るときは部署名ではなく業務内容の欄を読んでください。同じ「人事」でも、中身が採用中心か労務中心かで働き方が変わります。
人事に向いている人の6つの特徴

人事に向いているのは、成果が自分の手柄にならない状態を受け入れられる人です。会社の顔として人と会う華やかさの裏に、地道で見えにくい作業が積み重なっています。
当てはまる数が多いほど、人事という仕事の進み方と相性が良いと考えてください。
秘密を守り抜ける
人事は社員一人ひとりの給与額・人事評価・異動案といった情報を日常的に扱います。どれも、他部署には話せない内容ばかりです。
同期との雑談でも、知っているのに言えない話題が増えていきます。その状態を平気で続けられるかが、最初の分かれ目になるでしょう。
情報がひとつ漏れれば、人事という部署への信頼は大きく損なわれます。守秘は人事の入口であり、同時に土台でもあるのです。
陰で支えることにやりがいを感じる
社員が成長したとき、称賛されるのは本人と現場の上司です。採用や研修を組み立てた人事の名前は、表に出ません。
「自分が育てた」と言わずに済ませられる人ほど、人事の仕事は長く続きます。表彰の場では拍手する側に回ることが多くなるでしょう。
裏方の立場が物足りないと感じるなら、その感覚は無視しないほうが賢明です。
相手によって態度を変えず公平に判断できる
同期だから、もとの部署が同じだからという個人的な理由で、評価や異動を動かすわけにはいきません。
逆に、自分に反抗的な社員を不利に扱うことも許されないのです。好き嫌いを判断から切り離す作業を、毎年淡々と繰り返します。
公平さが崩れた人事は、社員から制度そのものを信用してもらえません。
厳しい判断から逃げない
業績が悪化すれば、制度や法律の要件を確かめたうえで、賞与の減額や契約更新の見送りを社員へ説明する側に立ちます。強い言葉を返されることもある場面です。
決めるのは経営でも、伝えるのは人事という役割分担が多くなります。つらい内容ほど、伝え方の丁寧さが問われるところです。
説明から逃げると、信頼を取り戻すまでに時間がかかります。
複数の予定を並行して動かせる
採用イベント、面接、入社手続き、研修が同じ週に重なります。しかも動かすのは自分の予定ではなく、面接官や求職者など他人の予定です。
ひとつの作業に没頭したい人より、細切れの仕事を並べて回せる人のほうが合います。予定を組み替える連絡が1日に何度も発生するためです。
人に好かれやすい
求職者にとって、最初に会う社員が人事です。応募するかどうかを決めるとき、担当者の印象が材料になることもあります。
笑顔や丁寧な返信といった小さな積み重ねが、会社の印象そのものをつくります。好かれること自体が目的ではなく、安心して質問してもらえる状態をつくるのが狙いです。
この6つは、どの領域でも同じ重みで効くわけではありません。志望する領域によって、伸ばすべき特徴は変わります。
| 特徴 | 採用 | 労務 | 制度企画 |
|---|---|---|---|
| 秘密を守り抜ける | ◎ | ◎ | ◎ |
| 陰で支えることにやりがいを感じる | ○ | ◎ | ◎ |
| 相手によって態度を変えず公平に判断できる | ◎ | ○ | ◎ |
| 厳しい判断から逃げない | ○ | ◎ | ◎ |
| 複数の予定を並行して動かせる | ◎ | ◎ | ○ |
| 人に好かれやすい | ◎ | ○ | ○ |
採用は人と会う量が多く、制度企画で問われるのは判断の一貫性です。労務は社員の生活を預かる立場なので、秘密を守る姿勢と厳しい判断から逃げない姿勢が同時に効いてきます。
人事に向いていない人の3つの特徴

人事と相性が悪いのは、短い周期で自分の成果を確かめたい人です。ここで挙げる3つは能力の不足ではなく、働き方の好みの違いを表しています。
当てはまる場合は、人事のなかで領域を選び直すか、別の職種と比べる材料にしてください。
すぐに成果が見えないと続かない
採用した人が戦力になるまで、短くても数か月はかかります。研修の効果が表れる時期は、さらに先です。
今月やったことの答え合わせが、今月できない仕事だと考えてください。成果が数字で返ってくる感覚を大切にする方には、物足りなさが残ります。
自分の手柄として評価されたい
人事の仕事は、うまくいったときほど現場の成果として語られます。良い人を採用できても、称賛は配属先の上司へ向かうでしょう。
評価面談で自分の貢献を説明しづらい構造があり、そこに納得できるかが分かれ目になります。承認されたい気持ちが強い方には、この構造がつらいはずです。
決めたことに責任を持てない
求職者への連絡ひとつで、応募を取り下げられることがあります。制度を変えれば、全社員の給与や働き方にも影響が出るでしょう。
決めたあとに「自分は反対だった」と言い出す人は、社内で信頼を得にくくなります。決定を自分の言葉で説明し続けられるかが問われる仕事です。
| 場面 | 向いている人の反応 | 向いていない人の反応 |
|---|---|---|
| 成果が見えるまでの時間 | 数年単位で結果を待てる | 短い周期で手応えがほしい |
| 評価のされ方 | 現場が褒められれば満足できる | 自分の名前で評価されたい |
| 情報の扱い | 言えないことを抱えていられる | 親しい相手には共有したくなる |
| 厳しい決定 | 理由を説明して受け止める | 板挟みを避けて先送りする |
| 仕事の進め方 | 複数の案件を並行して回す | ひとつに集中したい |
右の列が多い方でも、人事の道が閉じるわけではありません。労務のように成果の確認が毎月できる領域を選べば、手応えの持てる働き方に近づきます。
人事は本当に「花形」なのか — 公的データで確かめる
給与の面では、人事を花形と呼ぶのは難しいというのが答えです。ただし残業の短さと勤続年数の長さという、別の魅力がはっきり出ています。
ここで使う数値は、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の職種小分類「庶務・人事事務員」の値です。庶務を含む区分のため、人事だけを取り出した統計ではない点を踏まえて読み進めてください。
給与は一般労働者の平均をわずかに下回る
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、庶務・人事事務員の所定内給与額(残業代や賞与を含まない、毎月決まって支払われる額)は月32万4,700円で、一般労働者全体の33万400円をわずかに下回りました。職種ごとの数値は、同調査の(職種)第1表で確認できます。
年収の目安は513.5万円です(6月分のきまって支給する現金給与額=残業代を含む月の給与34万6,500円を12か月分に換算し、前年1年間の年間賞与その他特別給与額97万7,200円を足した当編集部の概算)。花形という言葉から想像する高給とは、少し離れた位置にあります。
報酬を短い期間で大きく上げたい方は、人事だけに絞らず、他の職種も並べて比べたほうが納得のいく選択ができます。
残業は月8時間で事務系のなかでも短い
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、庶務・人事事務員の超過実労働時間(残業時間)は月8時間でした。表4のとおり、並べた事務系の職種のなかでは短い部類に入ります。
生活のリズムを保ちたい方にとって、これは大きな判断材料になるでしょう。人事が「楽すぎ」と言われる評判と方向は合いますが、この数字が評判の理由を示すわけではありません。
ただし、この数字は調査年6月の1か月分で、年間の平均ではありません。採用の繁忙期や給与計算の締め日前、制度改定が重なる時期には残業が伸びます。
勤続13年、腰を据える人が多い職種
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」では、庶務・人事事務員の平均勤続年数は13.0年で、一般労働者全体の12.4年を上回りました。平均年齢は44.6歳です。
ただし差は0.6年で、大きく離れているわけではありません。表4のとおり総合事務員も13.0年なので、事務系のなかでは同じ水準だと受け取ってください。
社内の制度や人間関係の経緯を知っていることが、そのまま仕事の質につながる場面は多くあります。ただし、この数字から言えるのは短い周期で人が入れ替わる職種ではないという点までで、働きやすさそのものを示すわけではありません。
転職を重ねて年収を上げる進み方を考えているなら、後半で挙げる求人倍率もあわせて見てください。
| 職種 | 平均年齢 | 勤続年数 | 残業(月) | 所定内給与 | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 管理的職業従事者 | 51.2歳 | 22.1年 | 2時間 | 57.16万円 | 917.2万円 |
| 企画事務員 | 42.0歳 | 12.7年 | 11時間 | 41.34万円 | 690.7万円 |
| その他の営業職業従事者 | 41.6歳 | 12.7年 | 9時間 | 37.57万円 | 618.3万円 |
| 総合事務員 | 44.5歳 | 13.0年 | 10時間 | 32.43万円 | 529.6万円 |
| 庶務・人事事務員 | 44.6歳 | 13.0年 | 8時間 | 32.47万円 | 513.5万円 |
| 営業・販売事務従事者 | 42.4歳 | 12.3年 | 9時間 | 31.80万円 | 511.9万円 |
| 会計事務従事者 | 43.4歳 | 12.7年 | 9時間 | 31.83万円 | 509.3万円 |
管理的職業従事者の年収換算は917.2万円ですが、これは全職種の管理職と役員を含む区分の平均で、人事の管理職に限った数字ではありません。それでも、担当者のまま働き続けるか管理職へ進むかで到達点が変わる点は読み取れます。人事で報酬を伸ばすなら、領域を広げるか、制度全体を見る立場へ進むかの2つが現実的な道です。
【診断】あなたは人事に向いているか
当てはまる項目を数えると、人事の進み方と自分の相性が見えてきます。表の下に、数の読み取り方を添えました。
| No. | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | 同期に聞かれても、給与や評価の情報を話さずにいられる |
| 2 | 自分ではなく、現場や本人が褒められる状態で満足できる |
| 3 | 親しい相手でも、評価や異動では同じ基準で判断できる |
| 4 | 賞与の減額や契約更新の見送りを、相手に直接説明できる |
| 5 | その週の予定が細切れでも、抜けなく回せる |
| 6 | 初対面の相手に、安心して質問してもらえる話し方ができる |
| 7 | 今月の仕事の答えが数か月後に出ることを受け入れられる |
| 8 | 決定に反対意見が出ても、理由を説明し続けられる |
チェックの数は、次のように読み取ってください。
- 6つ以上:人事の進み方と相性が良い状態。次は志望する領域を決める段階です
- 3〜5つ:領域を選べば力を発揮できます。表2で強みが効く領域を確かめましょう
- 2つ以下:成果が短い周期で返る職種も並べて比べることをおすすめします
この区切りは当編集部の目安で、適性検査の結果ではありません。
2つ以下でも、人事に関わる仕事が消えるわけではありません。人材紹介会社の営業や採用広報など、人事の近くで働く選択肢が残ります。
人事に必要なスキル
人事で求められるのは、相手の話を要約する力と、決まったことを言葉にする力です。資格よりも、この2つが日々の成否を分けます。
資格は入口を広げる補助で、選考で見られるのは実務で使える力です。3領域に共通するものと、領域ごとに要るものを順に挙げます。
3領域に共通して要るもの
3領域に共通して要るのは、要約する力・書く力・法改正を追う姿勢の3つです。
- 要約する力:現場の「ほしい人材」を募集条件に翻訳する
- 書く力:募集要項・社内通知・制度の説明資料をつくる
- 法改正を追う姿勢:労働基準法や育児・介護休業法の改正に対応する
なかでも書く力は、想像より使う場面が多い技術です。人事が出す文章は、誰が読んでも同じ意味に取れる必要があります。曖昧な書き方をすると、その後の問い合わせ対応に追われることになるでしょう。
法改正の情報は、厚生労働省の発表や顧問社労士からの連絡で追うのが基本になります。調べた内容を社内向けに言い換えるところまでが人事の担当です。
領域ごとに特に要るもの
採用で効くのは、数字を読む力です。応募数、面接の通過率、辞退率を追いかけて、どこで人が離れているかを特定します。
労務で効くのは、正確な事務処理と社会保険・給与計算の知識になります。制度企画では、経営の言葉と現場の言葉を往復させる力が中心です。
志望領域が決まっているなら、そこで効くスキルから準備を始めると、選考で話せる材料が増えます。
人事の仕事のいいところと難しいところ

人事のやりがいは、会社の入口と成長に立ち会えることです。難しさは、会社と社員の板挟みになる場面が定期的に訪れるところにあります。
両方を並べて見たうえで、自分が耐えられる難しさかどうかを判断してください。人事のやりがいに関する詳しい情報は、「人事のやりがいとは?楽しくなる仕事の選び方や魅力ある業務内容を紹介!」の記事でも解説しています。
人事の仕事のいいところ
人事のやりがいは、会社の顔として求職者に会えること、会社の成長に立ち会えること、社員の成長を続けて見られることの3つです。
あなたが会社の顔となる
企業説明会や面接で求職者と接する時間が長いほど、あなたは「会社の顔」として記憶されます。丁寧な対応の積み重ねが、そのまま会社の印象づくりにつながります。
自分の対応をきっかけに入社を決めた新入社員が現れた日には、苦労の意味がはっきり分かるでしょう。
会社の成長に直接携わることができる
採用、人員配置、人材育成の積み重ねが社員の働きやすさを変え、業績の伸びにつながることもあります。
すぐに結果が見えるものではありませんが、会社の成長を間近で見たときの達成感は、人事ならではのものです。
社員の成長をフォローできる
採用から関わった社員を、研修やキャリア面談で継続して支えられます。入社時に右も左も分からなかった人が、数年後に後輩を指導する姿は印象に残るものです。
この積み重ねが、自分のモチベーションを支える燃料になります。
人事の難しいところ
難しさは、板挟み・望まない通知を伝える役目・ゴールの不在の3つに集まります。
社員と会社の規則や意向の間に板挟みになる
社員から相談を受けて味方になりたくても、会社の規則から外れる内容には応えられません。板挟みの苦しさは、人事を続けるうえで避けて通れない部分です。
ここで感情を抱え込みすぎないために、相談できる相手を社内外に持っておくと負担が軽くなります。
社員の希望ではない異動や解雇通知
希望しない部署への異動や契約終了の通知は、理由が妥当であっても強いストレスを伴うものです。解雇は法律上の要件を満たす場合に限られますが、決まった内容を伝える役目は人事に回ってきます。
伝える側の心の整理も仕事のうちだと考えて、自分のケアを後回しにしないでください。
明確なゴールがないためモチベーションを保つことが難しい
営業のように「売上が伸びたから目標達成」という数字でのゴールがありません。何をもって成功とするかを、自分で決める必要があります。
忙しい時期が続いても周囲から見えにくく、経験したことのない社員からの理解が得られにくい面もあるでしょう。採用人数や定着率など、自分なりの指標を置くと気持ちが続きやすくなります。
未経験から人事になるには

未経験から人事を目指すなら、求人への応募だけに頼らず、社内異動と隣接業務という回り道を同時に用意するのが現実的です。事務職の求人は競争が激しく、応募数だけでは決まりません。
人事になるための具体的な準備は、「憧れの人事になるには?必要なスキルや資格、おすすめの業界についても解説!」にまとめています。
事務職の求人倍率という前提を知る
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)によると、令和7年3月時点のハローワーク経由・常用(パートを除く)の有効求人倍率は、事務従事者が0.44倍、職業計が1.24倍でした。
0.44倍は、求人1件に対して求職者が2人以上いる状態を指します。求人の数そのものが少ないため、適性があっても入口で足踏みしやすいのです。
未経験の人事転職が「きつい」と言われる背景を考えるとき、この需給の差は入口の狭さを示す材料のひとつになります。なお、この数字はハローワークに出た求人の集計で、転職市場の全体を表すものではありません。
適性があるかどうかを確かめただけでは、人事の席には届きません。社内異動・隣接業務・資格という3つの入り方を、同時に設計してください。
社内異動から入る
いまの会社に人事部があるなら、社内公募や異動希望が最短の道になります。業務の流れと社内の人間関係を知っている点は、外部からの応募者が持てない強みです。
上司との面談では、希望を早めに口に出しておきましょう。異動は欠員が出たときに動くため、先に手を挙げていた人から声がかかります。
隣接業務から回り込む
人事に近い仕事から入る道も有効です。人材紹介会社の営業、採用広報、給与計算のアウトソーシング、総務などが該当します。
採用の現場を外側から経験すると、応募時に語れる具体例が増えるでしょう。現職のままでも、面接官を引き受ける、新人教育を担当するといった形で実績は作れます。
資格で加点する
資格だけで採用が決まることはありませんが、学ぶ姿勢を示す材料になるのは確かです。志望する領域に合わせて選ぶと、選考での説明に一貫性が出ます。
- キャリアコンサルタント
- 社会保険労務士
- 人事総務検定
労務を志望するなら社会保険労務士、採用を志望するならキャリアコンサルタントというように対応させると、志望理由も説明しやすくなるはずです。
未経験からの転職の進め方は、「未経験から人事に転職する方法は?おすすめの資格やポイントを知ってキャリアアップを目指そう」でも解説しています。
副業で人事の仕事を経験する
転職の前に実績を作っておきたい方には、副業で人事の仕事を経験する方法があります。実際にやってみると、自分に合うかどうかも判断できるでしょう。
人事の副業には、次のような仕事があります。
- 求人広告の作成
- 求職者とのメールでのやり取り
- 求職者との面接
- 依頼企業からの問い合わせ対応
稼働できる時間帯や、週あたりの稼働時間を応募条件にしている案件もある点は要注意です。応募の前に、本業と両立できるかどうかを確認してくださいね。
向いていないと感じたときの3つの選択肢
人事が合わないと感じたときの選択肢は、続けるか辞めるかの二択ではありません。領域を変える、隣接職へ寄せる、経験を持ち出すという3つの方向があります。
- 成果の周期が合わない → 人事のなかで領域を変える(労務は毎月、採用は数か月)
- 人と会う量が多すぎる → 総務・経理・広報など隣接職へ寄せる
- 板挟みがつらい → 人事の経験を活かして社外の職種へ移る
人事の仕事がつらい理由については、「人事の仕事がつらい3つの理由 | 病んでしまった人のための楽になる考え方」の記事でさらに解説しています。
人事のなかで領域を変える
採用が合わないからといって、人事全体が合わないとは限りません。成果が返ってくる周期は、労務が毎月、採用が数か月、制度企画が年単位と大きく異なります。
合わない理由が周期なのか、人と会う量なのかを言葉にすると、移るべき領域が見えてきます。
隣接職へ寄せる
総務、経理、広報といった社内を支える職種へは、人事からの移動がしやすい部類です。労務の経験があれば経理の給与まわり、採用の経験があれば広報と接点があります。
社内の制度に詳しいこと自体が、こうした職種では評価の対象です。
人事の経験を活かして別の職種へ
人材紹介会社のキャリアアドバイザー、採用コンサルタント、人事向けサービスの営業など、人事の経験がそのまま価値になる仕事があります。
社内の採用や制度を動かした経験は、顧客へ提案するときの説得材料として働きます。人事を離れる決断が、経験を捨てることにはなりません。
人事の仕事に関するよくある質問
未経験の可否・残業の多さ・資格の要否など、判断の手前でつまずきやすい5つの疑問をまとめました。
未経験でも人事になれますか?
なれますが、入り方を選ぶ必要があります。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)」では、令和7年3月時点のハローワーク経由・常用(パート除く)の有効求人倍率が事務従事者0.44倍、職業計1.24倍でした。
求人の数が限られるため、社内異動と隣接業務からの回り込みを並行して準備しておくと、選択肢が増えます。
人事の残業は多いですか?
平均では短い部類です。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、庶務・人事事務員の超過実労働時間は月8時間でした。
ただし採用の繁忙期や給与計算の締め日前には集中します。年間を通じて一定ではない点を見込んでおきましょう。
人事は女性が多い職種ですか?
女性のほうが多い職種です。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の庶務・人事事務員は労働者数77万1,980人で、そのうち女性が48万8,070人(当編集部の計算で63.2%)でした。
これは働いている人の構成比であって、向き不向きを示す数字ではありません。職場の雰囲気を知りたいときの参考として受け取ってください。
人事になるのに資格は必要ですか?
必須ではありません。社会保険労務士やキャリアコンサルタントは評価されますが、選考では実務経験と志望理由の具体性が先に見られます。
資格を取るなら、志望する領域に合わせて選ぶと、面接での説明がつながりやすくなります。
人事に向いていないと感じたらどうすればいいですか?
まず、何が合わないのかを分けてください。成果の周期、人と会う量、板挟みのどれが理由かによって、次の一手が変わります。
そのうえで、領域を変える・隣接職へ寄せる・経験を持ち出すの3つで考えると整理しやすいはずです。
まとめ
人事に向いているかどうかは、性格の良し悪しではなく、成果が自分の手柄にならない働き方を受け入れられるかで決まります。判断の要点は次の3つです。
- 適性は採用・労務・制度企画の3領域で違う。志望する領域を先に決める
- 「花形=高給」ではない。給与は平均をわずかに下回り、残業と勤続に特徴がある
- 合わないと感じても、領域変更・隣接職・経験の持ち出しという3つの出口がある
花形というイメージと、公的データが示す姿は一致しません。厚生労働省の調査で庶務・人事事務員として集計された数値では、所定内給与が一般労働者の平均をわずかに下回る一方、残業は月8時間、勤続年数は13.0年でした。
向いていないという結論も、進む方向を決める材料になります。次の一歩として、表5のチェックリストで該当数を数え、3領域のどこを志望するかを決めてみてください。
人事のキャリアの詳細については、「人事のキャリアパスとは?年収・資格・面接の答え方まで解説」の記事でさらに解説しています。







コメント
コメント一覧 (1件)
[…] […]