「もう頑張れない」はSOS。燃え尽き症候群(バーンアウト)の原因や休職する社員への対応

「もう頑張れない」はSOS。バーンアウトの症状と予防策
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この記事でわかること

「最近、仕事のやる気が出ない…これって甘え?」その症状、もしかしたら心理学で言う「バーンアウト(燃え尽き症候群)」かもしれません。

バーンアウトとは、エネルギーの消耗が進み、強いプレッシャーにさらされ続けることで起こる職業上の現象です。

この記事を読めば、自分の状態を客観的に理解でき、具体的な対処法がわかります。

ゲームや車で使う言葉とは違う、バーンアウトの正しい診断チェックから回復過程、上司への相談方法までを網羅的に解説。

この記事を読み終える頃には、自己否定から抜け出し、安心して回復への一歩を踏み出せるはずです。

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目次

バーンアウトとは?その意味と他の疾患との違い

バーンアウトとは?その意味と他の疾患との違い
バーンアウトとは?その意味と他の疾患との違い

「最近、何だか燃え尽きたようにやる気が出ない…」「これって甘えなのかな?」そんな風に感じていませんか。

その不調は、バーンアウト(燃え尽き症候群)かもしれません。

この章では、まずバーンアウトが決して「甘え」や「気の持ちよう」ではないことをお伝えします。

WHO(世界保健機関)にも認められた概念(職業上の現象)であること、そして混同されがちな「うつ病」や「適応障害」との違いをわかりやすく解説しますので、ご自身の状態を理解するための第一歩としてお読みください。

  • WHOによる最新のバーンアウト定義と基本概念
  • 燃え尽き症候群との違いと共通点
  • うつ病・適応障害との明確な違い

バーンアウトの定義と基本概念

バーンアウトとは、仕事などに熱心に取り組んできた人が、心身のエネルギーを使い果たし、まるで燃え尽きたかのように意欲を失ってしまう状態を指します。

WHOが定めた国際的な分類(ICD-11)では、病気や精神疾患ではなく「仕事に関連する現象」として位置づけられています。

これは、あなたの不調が決して「気の持ちよう」や「弱さ」の問題ではなく、過度なストレスによって誰にでも起こりうる、健康に関わる問題だと国際的に認められていることを意味します。

この概念は1974年にアメリカの医師ハーバート・フロイデンバーガーによって初めて学術論文で取り上げられ、多くの同僚がエネルギーを消耗していく様子を観察したことが研究のきっかけとなりました。

特に現代では、お客様の満足のために常に笑顔を求められたり、相手の気持ちを細やかに汲み取ったりといった「感情のすり減らし(感情労働)」が求められる場面が増え、バーンアウトにつながりやすい一因とされています。

燃え尽き症候群との違いと共通点

「バーンアウト」と「燃え尽き症候群」は、呼び方が違うだけで、指しているものはまったく同じです。

「バーンアウト(burnout)」を日本語に訳したものが「燃え尽き症候群」というわけです。

この記事では、より一般的に使われる「バーンアウト」という言葉で統一しますが、どちらも同じ状態だと考えていただいて問題ありません。

両者とも仕事やスポーツ、学生生活、ときに家庭生活でも見られ、過度な心身の疲労、特に精神面での疲弊により、それまで意欲的に働いていた人が急に働く意欲を喪失してしまう状態を表します。

特に感情労働を伴う職種に多く見られ、完璧主義者や責任感の強い人がなりやすい傾向があります。

用語の違いに惑わされず、どちらも同じ状態を指していることを理解し、症状の本質に注目することが重要です。

うつ病・適応障害との違い

バーンアウトと、うつ病や適応障害との大きな違いは、不調の原因が「仕事に関連しているか、もっと幅広いか」という点です。

バーンアウトが特に職業上のストレスからくる仕事への不適応を表すのに対し、うつ病はその原因や症状が職業上かプライベート上かは関係なく、明確な精神的疾患です。

適応障害
転職や人間関係の変化など特定のストレス要因に対して適応できず、抑うつ感や不安感が生じる状態を指します。
特定のストレス原因(例:転職、異動)がはっきりしており、その原因から離れることで改善が期待できます。

バーンアウト
主に仕事のストレスが原因のため、職場環境の調整や十分な休息によって回復に向かうことが多いのが特徴です。
バーンアウトが進行するとうつ病との区別が困難になることもあるため、専門医への相談をおすすめします。

うつ病
プライベートを含む生活全般に影響が及ぶため、専門的な治療が必要になる場合があります。

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バーンアウトの主な症状とは?

バーンアウトになりやすい人の特徴とは?
バーンアウトになりやすい人の特徴とは?

バーンアウトには、代表的な3つの心の症状と、それに伴って現れる心身の変化があります。

「もしかして自分も?」と感じている方は、ご自身の状態と照らし合わせながら読み進めてみてください。

頑張り屋のあなただからこそ現れやすいサインを客観的に理解し、自分を労わるきっかけにしましょう。

責任感の強いあなたが現在感じている症状を客観的に理解し、適切な対処につなげるため、以下の内容を解説します。

  • 脱人格化による冷淡な態度の背景
  • 情緒的消耗感による精神的疲労の実態
  • 達成感の低下と自己効力感の喪失
  • 身体症状や行動パターンの変化

情緒的消耗感による精神的疲労

「情緒的消耗感」とは、文字通り「心のエネルギーが枯渇してしまった状態」を指し、バーンアウトの中心的な症状です。

仕事に情熱を注ぎ、お客様や同僚に気を配る中で、感情のバッテリーが切れてしまったような感覚です。

現代では企業の業績向上において、商品の品質ではなく感情労働の品質が求められるようになったことが、この症状を引き起こしやすくしています。

具体的には「1日の仕事が終わると『やっと終わった』と感じる」「身体も気持ちも疲れはてたと思う」「仕事のために心にゆとりがなくなった」といった症状が現れます。

このような感覚に心当たりがあるのなら、それはあなたの心が「もう限界だよ」とサインを送っている証拠です。決して甘えではありません。

脱人格化による冷淡な態度

「脱人格化」とは、心のエネルギーが底をつき、これ以上傷つかないように自分を守るため、無意識に人との間に壁を作ってしまう状態を指します。

いわば、自分を守るための心の鎧のようなものです。

思いやりを持った対応が難しくなり、以前はそんなことなかったはずなのに、顧客や同僚に対して事務的で、どこか冷たい態度をとってしまいます。

具体的には顧客や同僚への配慮のない言動、相手を名前ではなく番号や記号で呼ぶ、機械的で感情のこもらない対応、「どうせ理解されない」といった諦めの感情などが見られます。

自分のこうした態度の変化に気づいたら、それは心が悲鳴をあげている大切なサインかもしれません。

対人サービスにおいては相手への思いやりが必要な一方で、感情移入しすぎるとバーンアウトにつながるリスクがあるため、共感性を持ちながらも客観的な態度を保つ「突き放した関心」が重要になります。

達成感の低下と自己効力感の喪失

情緒的なエネルギーが枯渇し、人との間に壁を作ってしまうと、仕事の質にも影響が出始めます。

その結果、以前のように仕事で成果を出せなくなったり、「よくやった」という手応えを感じられなくなったりするのが「個人的達成感の低下」です。

前の2つの症状が進行することで、本来持っていた能力を発揮できなくなり、仕事の質が低下します。

その結果、「自分は何もできない」「役に立たない」という感覚が強くなり、自己効力感が著しく損なわれてしまうのです。

具体的には、以下の様な症状が表れます。

  • 今まで楽しいと思えていた仕事が、つまらないと感じる
  • 過去の成功体験を思い出せなくなる
  • 小さなミスでも過度に落ち込む
  • 新しいことに挑戦する意欲がなくなる

軽症であれば十分な休息と気分転換により比較的短期間で改善する場合もありますが、個人差が大きいため、早めの対処が重要です。

身体症状や行動パターンの変化

バーンアウトは精神的症状だけでなく、慢性的なストレスや過労の蓄積により生じる情緒的・身体的・精神的な極度の疲弊状態として身体症状や行動パターンの変化も伴います。

WHO(世界保健機関)によって、職場での慢性的なストレスに起因する職業上の現象として分類されており、心身は密接に関連しているため、精神的な疲弊が身体症状として現れることは医学的に当然の現象です。

身体症状としては慢性的な疲労感と倦怠感、頭痛や肩こりの頻発、睡眠障害、食欲の変化、胃腸の不調、免疫力低下による風邪の頻発などがあります。

行動パターンの変化としては遅刻や欠勤の増加、身だしなみへの関心低下、社交的活動からの撤退、趣味や娯楽への興味喪失などが見られます。

これらのサインは、目に見えにくい心の疲労が、行動や身体に現れている証拠です。

複数の項目に心当たりがある場合は、一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談することも考えてみてください。

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バーンアウトの原因とは?なぜ起こるのか

バーンアウトの原因とは?なぜ起こるのか
バーンアウトの原因とは?なぜ起こるのか

「あんなに頑張ってきたのに、なぜこんなに無気力になってしまったんだろう…」と、ご自身を責めていませんか。

バーンアウトは、あなたの頑張りが足りなかったから起こるのではありません。

この章では、バーンアウトを引き起こす主な原因を「職場などの環境要因」と「ご自身の気質などの個人要因」に分けて解説します。

原因を知ることで、自分を責める気持ちが和らぎ、次の一歩を考えるヒントが見つかるはずです。

責任感の強いあなたがなぜこのような状態に陥ったのかを理解し、自分を責めることなく適切な対処につなげるため、以下の内容を解説します。

  • 劣悪な職場環境や人間関係の影響
  • 慢性的なストレスと疲労の蓄積メカニズム
  • 個人の性格特性や価値観の影響
  • 感情労働の過剰負担による心理的消耗

慢性的なストレスと疲労の蓄積

バーンアウトの最も根本的な原因は、長期間にわたる過度なストレスと、心身の回復が追いつかないことによる疲労の蓄積です。

例えば、連日の長時間労働による身体的な疲れ、休日も仕事のことが頭から離れない精神的な緊張、そして、そうしたストレスをうまく発散できない環境が続くことで、心身のエネルギーは少しずつ削られていきます。

慢性的なストレスや過労の蓄積により生じる情緒的・身体的・精神的な極度の疲弊状態がバーンアウトの根本原因です。

コロナ禍で増えたともいわれるバーンアウトが深刻化しており、連日の長時間労働による身体的疲労の蓄積、休日も仕事のことを考えてしまう精神的負担、適切な休息やストレス発散ができない環境が続いています。

あなたの疲労は単なる「疲れ」ではなく、WHOに認められた状態なのです。

劣悪な職場環境や人間関係

バーンアウトは個人の問題として片付けられがちですが、実際には職場環境が大きく影響しています。

むしろ、原因の多くは環境側にあるとも言われています。

バーンアウトは個人の問題ではなく、組織の問題と捉えることが重要で、組織の文化が大きく関係しているのです。

消費者と企業のパワーバランスが大きく変化しているため、いい加減な対応をすれば、それはSNS上でたちまち拡散されるリスクをはらんでいる現状があります。

具体的な環境要因として、以下の内容が挙げられます。

  • 過重な業務量と不適切な人員配置
  • 上司や同僚との人間関係の悪化
  • 評価基準の曖昧さや不公平感
  • パワーハラスメントや職場内いじめ
  • 相談できる環境や制度の不備

職場環境の問題は個人の努力だけでは解決が困難なため、産業医や人事部門、外部の相談機関を活用することが重要です。

個人の性格特性や価値観の影響

環境だけでなく、もともと持っているあなたの素敵な人柄や仕事への真摯な姿勢が、皮肉にもバーンアウトにつながってしまうことがあります。

これは、あなたが悪いのではなく、あなたの頑張りが環境や状況とうまく噛み合わなかった結果です。

理想主義者、すなわち仕事に対して夢や希望を抱く人ほど陥りやすく、理想が高いため現実とのギャップに苦しむ特徴があります。

使命感の強い人や、負荷の高い環境で働いてきた人が陥りやすい消耗状態であり、妥協や甘えとはむしろ正反対です。

完璧主義で妥協することができない、責任感が強く他人に仕事を任せられない、「NO」と言えない断りにくい性格、他人からの評価を過度に気にする、自己犠牲的で自分の限界を無視しがちといった特性があります。

こうした真面目さや責任感は、仕事をする上で素晴らしい長所です。ただ、あまりに自分を追い込みすぎると、心身が悲鳴をあげてしまいます。

自分を守るために、ときには「今はできません」と断る勇気を持つことも、あなたの素晴らしい長所を活かし続けるために必要なスキルなのです。

感情労働の過剰負担

医療、介護、接客、教育といった職種では、相手の気持ちを汲み取り、思いやりをもって接する「感情労働」が常に求められます。

自分の感情を抑え、仕事のために特定の感情を表現し続けることは、目には見えませんが、心を大きく消耗させるのです。

感情労働とも称される医療や介護などの職業では、顧客・患者・利用者の気持ちや要望を受け止め、思いやりや気遣いをもって接することが求められ、多大な情緒面のエネルギーを費やし、疲弊、消耗していきます。

体を使い「肉体労働」しているとともに心を使い「感情労働」も行っている状況が続いており、顧客からの理不尽なクレーム対応、常に笑顔を求められるサービス業務、患者や利用者の感情に寄り添う医療・介護職、チームメンバーの感情管理を求められるマネジメント業務、SNS時代における評判管理のプレッシャーなどが具体例として挙げられます。

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バーンアウトになりやすい人の特徴とは?

バーンアウトの主な症状とは?
バーンアウトの主な症状とは?

前の章ではバーンアウトの原因を見てきましたが、ここでは特に「どんな人がバーンアウトに陥りやすい傾向があるのか」という個人の特徴に焦点を当ててみましょう。

もし当てはまる項目があっても、それはあなたの短所ではありません。むしろ、仕事に真摯に向き合っている証拠です。

ご自身の頑張りのパターンを理解し、自分を追い込みすぎないためのヒントにしてください。
責任感の強いあなたがなぜバーンアウトのリスクが高いのかを理解し、自分を責めることなく適切な予防につなげるため、以下の内容を解説します。

  • 完璧主義で責任感の強い人の心理的特徴
  • 対人支援やサービス業に従事している人のリスク要因
  • 高い理想を持って頑張りすぎる人の陥りやすいパターン
  • ストレスへの対処が苦手な人の典型的行動

完璧主義で責任感の強い人

「どうせやるなら120%の力で」「期待以上の成果を出したい」そんな風に、何事にも手を抜かず、常に全力で取り組む真面目な人ほど、エネルギーの消耗が激しくなりがちです。

どの仕事にも手を抜かず全力でチャレンジするため、仕事の内容や量によっては頭がパンクしてしまい、他人から頼まれたことを引き受けやすく、自分の仕事に手が回らないケースが頻発します。

完璧主義な人は責任感も強いため、途中で辞めてしまった仕事に対しても罪悪感を抱きやすく、心にストレスを感じてしまいます。

しかし、これらは使命感の強い人や、負荷の高い環境で働いてきた人が陥りやすい消耗状態であり、妥協や甘えとはむしろ正反対です。あなたの完璧主義や責任感は決して悪い特性ではないのです。

対人支援やサービス業に従事している人

特に、人の心や体に関わる医療・介護・教育関係者など、常に高い緊張感や責任感が求められる仕事をしている人は、バーンアウトのリスクが高いと言われています。

感情労働とも称される医療や介護などの職業では、顧客・患者・利用者の気持ちや要望を受け止め、思いやりや気遣いをもって接することが求められ、多大な情緒面のエネルギーを費やし、疲弊、消耗していく状況があります。

対人サービス業では身体的労働の他に精神的な労働も多く必要になり、体を使う「肉体労働」しているとともに心を使う「感情労働」も行っているのが特徴です。

企業の業績を上げるのに、商品の品質ではなく感情労働の品質が求められるようになったことは、バーンアウト症候群をより引き起こしやすくなった一因となっています。

共感力が高く感情移入しやすい人は特に注意が必要です。

高い理想を持って頑張りすぎる人

顧客や同僚と深い関係性を築こうと努力する人や、完璧主義や高い目標を持つ人は、自分に対する期待が大きく、それがストレスとなりやすい傾向があります。

高い理想を持つ人は、現実とのギャップに苦しみやすく、達成感や充実感よりも疲労感が勝りやすく、バーンアウトにつながります。

一生懸命取り組んだにもかかわらず期待していた評価が得られない場合、達成感は得られず、結果疲労感だけが蓄積していくパターンが典型的です。

ひたむきに仕事をがんばり続け、仕事で関わる人と信頼関係を築く努力をしたにも関わらず、逆にやる気が削がれたり、顧客や同僚の顔を見るのも嫌だと感じたりし始めたら要注意。

特に社会人経験の浅い若い世代は、高い理想を抱いて仕事に臨む一方で、現実の壁にぶつかりやすいため、注意が必要です。

経験を重ねる中で、理想と現実のちょうど良いバランスを見つけていくことが大切になります。

ストレスへの対処が苦手な人

適切なストレス管理ができないと、心身のバランスが崩れ、バーンアウトに陥りやすくなります。

具体的には、リラクゼーション不足、不十分な職場でのサポート体制、ストレスを発散する方法の欠如などが挙げられます。

適切にストレスを発散する方法を知らないと、仕事のストレスはたまっていく一方で、本人も気づかないまま心身にストレスが蓄積していき、やがてバーンアウトを引き起こします。

また、自分に自信が持てず、「もっと頑張らないと認めてもらえない」と感じやすい傾向も、バーンアウトの一因となることがあります。

周りの評価を気にするあまり、自分の限界を超えて無理をしてしまうのです。

仕事とプライベートを分けることが苦手な人や、休日でも仕事のことを考え続けてしまう人は特に注意が必要です。

ストレス対処は学習可能なスキルであり、深呼吸や短時間の散歩、信頼できる人への相談など、自分に合った方法を見つけることが重要です。

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バーンアウトの診断方法とチェック手段

バーンアウトの診断方法とチェック手段
バーンアウトの診断方法とチェック手段

「自分のこの状態は、本当にバーンアウトなのだろうか?」と疑問に思う方のために、この章ではご自身の状態を客観的に把握するための手がかりをご紹介します。

医学的な「診断」ではありませんが、自分を理解するための一つのツールとしてご活用ください。

  • 世界標準のマスラック・バーンアウト・インベントリー(MBI)を用いた専門的診断
  • 日本の労働環境に特化した日本版バーンアウト尺度(JBS)での評価
  • 日常生活で気づける初期兆候のセルフチェック方法

マスラック・バーンアウト・インベントリーの活用

「マスラック・バーンアウト・インベントリー(MBI)」は、世界中で使われている、バーンアウトの状態を測るための代表的な心理学的質問紙(尺度)です。

医療機関での「診断」に使われるものではありませんが、専門家が状態を把握する際などに活用されています。

このツールでは、バーンアウトを「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3つの症状で評価することが特徴です。

情緒的消耗感   :仕事を通じて心のエネルギーを使い果たした状態
脱人格化     :顧客や同僚に対して冷たい態度をとってしまう状態
個人的達成感の低下:仕事での成果や価値を感じられなくなる状態

これらの質問票で高い数値が出たり、ご自身で「つらい」と感じたりする場合は、一人で抱え込まず専門機関に相談してみることをおすすめします。

日本版バーンアウト尺度での評価

「日本版バーンアウト尺度(JBS)」は、MBIを基に、日本の職場環境や文化に合わせて作られた質問票です。

日本人の感覚にフィットした内容で、ご自身の状態を振り返ることができます。

評価は「0点:まったくない」から「4点:いつもある」までの5段階で行い、個人的達成感に関する一部項目は逆転項目となっています。

MBIと比較して、日本人の働き方や価値観により適合した内容となっており、より正確な自己評価が可能です。

近年では、より新しい尺度として「バーンアウト・アセスメント・ツール(BAT)」なども研究されており、状態を把握するための選択肢は増えています。

「何か変だな」と感じた際は、早めにチェックリストを実施することをおすすめします。

セルフチェックで気づく初期兆候

バーンアウトの初期兆候は、朝起きるのが辛い、仕事への関心の低下、慢性的な疲労感、イライラしやすくなるなど、日常生活の小さな変化として現れます。

身体面では睡眠の質の低下や食欲不振、感情面では達成感の減少や無力感、行動面では作業効率の低下や欠勤の増加、人間関係面では同僚や顧客に対する冷たい態度などが挙げられます。

特に「がんばり屋さん」や「完璧主義者」の人は要注意で、自分が高く掲げた理想に届かなかった時にバーンアウトの症状が出やすい傾向があるのです。

ひたむきに仕事をがんばり続けたにも関わらず、やる気が削がれたり、人と関わることが苦痛に感じ始めたら、早期の対処が必要なサインです。

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バーンアウトを予防するには?有効な対策法

バーンアウトを予防するには?有効な対策法
バーンアウトを予防するには?有効な対策法

バーンアウトは、なる前に対処することが何よりも大切です。

この章では、心と体のエネルギーを無駄に消耗しないために、今日からできる予防策や考え方のヒントをご紹介します。

「もうすでに限界かも…」と感じている方にとっても、状況を改善するきっかけになるはずです。
バーンアウト予防には主に以下の内容があります。

  • 科学的根拠に基づいた休息の取り方とストレスマネジメント技術
  • 職場環境の改善と組織レベルでの取り組み
  • ワークライフバランスの実現とプライベート時間の確保
  • 専門機関やカウンセリングサービスの効果的な活用方法

十分な休息とストレスマネジメント

バーンアウト予防の基盤となるのは、質の高い休息と効果的なストレスマネジメントです。

どんなに忙しい状況でも、1日7-8時間の睡眠時間を確保し、規則正しい食事を心がけることが重要です。

心身が健康であってこそ、持続可能な働き方が実現できます。

具体的なストレス解消方法として、深呼吸や瞑想などのリラクゼーション技法、軽い運動や散歩を日常に取り入れることが効果的です。

また、仕事終了後の「オフタイム」を意識的に作り、趣味や読書など自分が楽しめる時間を確保しましょう。

ワークマネジメントツールを活用して業務を効率化し、ストレスを溜めない環境を整えることも、現代のビジネスパーソンには欠かせない予防策となっています。

職場環境の見直しと調整

個人の努力だけでバーンアウトを防ぐのには限界があります。

働きやすい職場環境を整えることは、あなた自身と、そして周りの同僚を守る上でも非常に重要です

働きがいのある企業として評価される組織では、フレックスタイム制度や短時間勤務制度、テレワークの導入により、有休消化率の向上と残業時間の削減を実現しています。

職場での具体的な取り組みとして、1on1ミーティングによる定期的な状況確認、新入社員や転職者への手厚いサポート体制の構築、業務量の適正化などが効果的です。

管理職の方は、部下が相談しやすい環境づくりと、質的・量的な負担の軽減に積極的に取り組むことで、チーム全体のメンタルヘルス向上につながります。

プライベートとのバランスを保つ

ワークライフバランスの実現には、働く場所や時間に対する柔軟な考え方が不可欠です。

仕事はもちろん大切ですが、あなたの人生は仕事だけで成り立っているわけではありません。

プライベートの時間を充実させることが、結果的に仕事への良いエネルギーにつながるのです。

豊かさは仕事と生活の両方の充実から実現できるという考え方が広まり、企業も多様な働き方を支援する制度を整備しています。

実践的なバランス保持方法として、子どもの送り迎えや介護などの個人の状況に合わせた勤務時間の調整、通勤ラッシュを避けた出退勤時間の設定などが挙げられます。

また、仕事とプライベートの境界を明確にし、帰宅後は仕事のメールをチェックしない時間を設けたり、週末は完全に仕事から離れる「デジタルデトックス」の時間を確保することも効果的です。

カウンセリングや専門機関の活用

自分一人で抱えきれないと感じたときは、専門家の力を借りることも大切な選択肢の一つです。

カウンセリングなどは、弱っているときだからこそ、心強い味方になってくれます。

燃え尽き症候群は「なんとなくやる気が出ない」「仕事に行くのが億劫」など、日常的に感じやすい症状から始まるため、自分では気づきにくいという特徴があるのです。

カウンセリングでは、自分の状態を客観的に話すことで現状を受け入れる作業ができ、守秘義務があるため周囲に相談しづらい場合でも安心して利用できます。

活用できる専門機関として、企業の産業医やカウンセラー、従業員支援プログラム(EAP)、地域の精神保健福祉センターなどがあります。

2019年にWHOのICD-11に「職業上の現象」として分類されたことで、バーンアウトが国際的に公的な問題として認知され、専門機関に相談する重要性がより明確になりました。

ストレスマネジメント研修への参加や定期的なセルフチェックの実施により、早期発見・早期対応を心がけることが重要です。

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バーンアウトから回復するには?効果的な方法

バーンアウトから回復するには?効果的な方法
バーンアウトから回復するには?効果的な方法

この章では、バーンアウトからの具体的な回復方法について紹介します。

バーンアウトの回復には主に以下の内容があります。

  • 段階的な職場復帰とそのプロセス
  • 認知行動療法による思考パターンの改善
  • 薬物療法の適切な活用と注意点
  • 回復期間の目安と日常生活での工夫

段階的な職場復帰の進め方

バーンアウトからの回復は段階を踏んで進めることが効果的です。

まず自分の状態を受け入れることから始まり、完全に仕事から距離を置く休養期間を設けます。

その後、ストレス要因を分析して環境を調整し、軽い運動や趣味活動から段階的に活動を再開していきます。

職場復帰では時短勤務や業務量の調整から始め、最終的に元の業務レベルまで段階的に戻していくのです。

このプロセスでは焦りは禁物で、自分のペースを大切にすることが重要です。

会社に相談しづらい場合でも、産業医や人事部門には相談窓口が用意されていることが多いため、一人で抱え込まず専門家のサポートを受けながら復帰の道筋を立てましょう。

認知行動療法を用いた治療法

認知行動療法は、ストレスに直面した際の思考パターンと行動を見直すことで、気持ちを楽にする治療法です。

この療法では、ストレス反応を「認知」「気分・感情」「身体反応」「行動」の4つの領域に分けて理解します。

例えば上司に注意された際、「自分はダメな人間だ」という認知から「改善点を教えてもらった」へと思考を変えることで、感情や身体反応、行動も好転させることができます。

日記やアプリを活用して自分の思考パターンを記録することから始めると効果的です。

認知行動療法は薬物療法と同等またはそれ以上の効果があることが研究で示されており、セルフケアとしても活用できるため、専門家のカウンセリングと併用することでより効果的な回復が期待できます。

薬物療法の必要性と注意点

バーンアウトの状態が深刻化し、適応障害やうつ病の診断基準を満たす場合、それらの疾患として診断されることがあります。

軽症であれば薬物療法なしでも回復可能ですが、中等症以上では抗うつ薬や抗不安薬の処方が検討されます。

不眠症状が強い場合は睡眠導入剤、不安症状が強い場合は抗不安薬が用いられることがあるのです。

近年では、バーンアウトがきっかけで発症したうつ病と診断され、薬物療法が困難な場合などに、医師の判断によってTMS治療が選択肢となることがあります。

ただし薬物療法は対症療法であり、根本的な解決には環境改善や認知行動療法との組み合わせが重要です。

治療を検討する際は心療内科や精神科の専門医に相談し、症状の程度と生活状況を総合的に判断してもらいましょう。

回復期間の目安と生活上の工夫

バーンアウトからの回復期間は症状の程度により大きく異なります。

回復を促進するには規則正しい生活リズムを整え、栄養バランスの取れた食事を3食摂取し、散歩などの軽い運動から始めることが大切です。

マインドフルネスや瞑想、深呼吸法などのリラクゼーション技法を日常的に実践することで、ストレス耐性を高めることもできます。

読書や音楽鑑賞などの趣味の時間を確保することも回復に役立ちます。

感情が常に不安定で自力での対処が困難と感じる場合は、迷わず専門家への相談を検討し、回復の兆しが見えても再発防止のため継続的なケアを心がけましょう。

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バーンアウト経験者の職場復帰体験談

バーンアウト経験者の職場復帰体験談
バーンアウト経験者の職場復帰体験談

この章では、実際にバーンアウトを経験し、それぞれ異なる方法で回復を果たした方々の体験談について紹介します。

バーンアウトからの回復体験談には主に以下の内容があります。

  • 休職制度を活用した段階的復職パターン
  • 環境を変えることで根本解決を図ったケース
  • 職場内での働き方改革による回復事例

医療機関勤務でバーンアウトを経験した元スクールカウンセラーのケース

30代女性のDさんは、もともと中学校のスクールカウンセラーとして勤務していましたが、その後医療機関(精神科クリニック)へ転職しました。

転職後は、より専門的な相談業務や多様な患者対応に追われるようになり、支援者としての責任感から「自分がしっかりしなければ」という思いが強まる一方で、感情的な疲労とストレスが蓄積。やがて、相談業務そのものが苦痛となり、感情のコントロールが難しいバーンアウト状態に陥りました。

Dさんは専門のカウンセリングを受けるなどして、自身の感情や限界を理解し、無理をしすぎない働き方やセルフケアの重要性を学びました。

復職後は、仕事の負担を適切に調整し、必要に応じて業務を他者に委ねるなど、自分を守る線引きを意識しながら、支援の質を保ちつつ安定した働き方を実現しています。

自身の経験を通して、「支援者もケアされるべき存在」というメッセージを発信し続けています。

出典:『燃え尽き症候群(バーンアウト)』体験談 ~感情労働の疲労の実際~

虚しさと孤立感に悩んだ福祉ケースワーカーのバーンアウト体験

35歳女性のケースワーカーは、自分の担当している家庭にかつての担当者が訪問していることに気づき、職場での孤立感と不信感を深めていきました。

自分の努力や成果が認められず、同僚や先輩にも心を開けなくなり、「感謝もされず、困った時だけ利用される」と感じてしまいました。

それでも多くの困難な家庭を支える使命感から、虚しさを抱えつつも笑顔の仮面をかぶって仕事を続けましたが、次第に心身の疲労は蓄積し、バーンアウト状態に。

身体はだるくても訪問業務は完璧にこなす一方、精神的には追い詰められていきました。

休職と治療を経て、カウンセリングで自身の感情や職場との距離感を見直し、復職後は業務の分担見直しや支援の受け入れを意識。

今では、自分の健康を守ることが支援者としての持続可能な働き方につながると語っています。

出典:燃え尽き症候群になった私

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まとめ

まとめ
まとめ

本記事では、バーンアウトの症状や原因、うつ病との違いについて詳しく解説しました。

バーンアウトは決して「甘え」や「弱さ」ではなく、持続的なストレスによって誰の心にも起こりうるエネルギーの枯渇状態です。

予防としては、日常生活で心身のバランスを保ち、不調の兆候を見逃さないことが大切です。

最も重要なのは、自身の心身のサインに気づき、自分を責めずに適切な休息を取ること。

そして、無理をせずに、一人で抱え込まずに専門家や信頼できる人に相談することです。

この記事が、あなたが回復への第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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