- 組織開発とは、組織の健全性と成果を高めるための継続的な取り組みです。
- 組織開発により、組織全体の生産性が大幅に向上します。
- 組織開発には多様な手法が存在するため、かえって組織の結束力や信頼関係を損なうリスクがあります。

組織開発を始めたいけれど「人材開発との違いは何?」と経営層から質問されて答えに困った経験はありませんか?
リモートワーク普及により一体感・生産性・エンゲージメントが低下する中、現場からは「また新しい施策?」という声も聞こえてきます。
この記事では、2025年のハイブリッドワーク時代に適したフレームワーク選択から効果測定まで、失敗しない組織改革の進め方を具体的に解説。



人事担当者として、自信を持って組織開発に取り組めるロードマップをお届けします。
組織開発とは何か


この章では、組織開発の基本と現在の状況をわかりやすく解説します。
リモート普及後の出社回帰や働き方の多様化により、いま組織開発の重要性が改めて注目されています。



まず、何を指すのか・なぜ必要かを押さえましょう。
- 組織開発の定義と、その背景にある行動科学
- 人材開発との違い(対象・アプローチ・成果の違い
- ハイブリッドワーク時代に求められる実践のポイント
組織開発の定義と基本的な考え方
組織開発とは、関係性や働き方のプロセスを整え、組織の健全性と成果を高めるための継続的な取り組みです。
個人どうし・部門どうしの協働を促し、チームの力を引き出します。
1950年代の米国で発展した行動科学の知見を土台に、当事者が自ら組織をより良くしていく実践を指します。
組織開発が重要なのは、対話と協働により個人では出せない発想や判断が生まれやすくなるからです。
組織開発は単発ではなく継続が前提です。
オンラインと対面を組み合わせ、状況に合わせて設計しましょう。
人材開発と組織開発の違い
人材開発と組織開発の最大の違いは、対象とアプローチにあります。
人材開発は個人のスキルや知識を伸ばす取り組み、組織開発は関係性・プロセス・制度・文化を整え、組織全体の働きやすさと成果を高める取り組みです。
具体的には、人材開発が研修・OJT・コーチングを通じて個人の能力向上を目指すのに対し、組織開発は「診断→対話→合意→試行→制度につなぐ」を繰り返し、変化を定着させます。
優秀な人材がいても、関係性が悪いと力は発揮されにくくなります。個々が働きやすい環境づくりが欠かせません。
両方を組み合わせることで、個人の成長と組織の変革を同時に実現できます。
組織開発が注目される背景
2025年現在、組織開発が注目される背景には、出社回帰とリモートワークのギャップ、働き方の多様化、AI・DX時代への対応、コミュニケーション不足の深刻化があります。
テレワーク実施者の働き方としてハイブリッドが一般的ですが、最新の調査によると従業員の55.3%は「リモート派」を希望しており、企業と従業員の間に意識ギャップが存在します。
特に、テレワークの課題として「従業員間のコミュニケーションが減少した」が上位に挙がり、「チームの一体感やエンゲージメントが弱まった」という課題も顕在化しています。
これらの課題に対応するため、ハイブリッドワークに対応した関係性構築手法の導入や、デジタルツールを活用した心理的安全性の醸成が重要となっています。
※心理的安全性とは、組織のなかで自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態を表す度合いのことです。
組織開発に取り組むメリット


この章では、組織開発に取り組むことで期待できるメリットを、実務の視点で整理します。
2025年のハイブリッドワーク時代において、組織開発は単なる理想論ではなく、企業の競争力を左右する実践的な取り組みとなっています。
- 生産性の向上(会議・意思決定・連携の改善)
- エンゲージメントの向上(安心して発言・挑戦できる環境)
- 変化への適応力強化(素早い試行と学習)
- 人材定着の改善(働きがい・成長機会の充実)
メリット(1)組織の生産性が向上する
組織開発により、会議の効率化、意思決定スピードの向上、部門間連携の強化が実現し、組織全体の生産性が大幅に向上します。
2025年現在のハイブリッドワーク環境では、従来の働き方では見えなかった非効率な部分が可視化されるため、組織開発による改善効果が顕著に表れるからです。
事例では、会議時間の削減や意思決定の迅速化、部門横断プロジェクトの増加などの改善が見られることがあります。
プロセスの見える化、役割の明確化、コミュニケーションルールの整備により、進捗が見えにくい・意思決定が遅いといった課題を改善しやすくなります。
メリット(2)従業員エンゲージメントが高まる
組織開発の取り組みにより、エンゲージメント指標や会社推奨度が改善した事例も報告されています。
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員との間における確固たる信頼関係を意味します
2025年の出社回帰トレンドの中で、従業員の55.3%が「リモート派」を希望する現状において、出社を一律に求めるのではなく、行く価値を感じられる環境づくりを目指します。
相互理解の促進、価値観の共有、働き方ニーズへの配慮を通じて「働きたい環境」を整えます。
フィードバックの習慣化や定期1on1は、上司と部下の信頼強化にも役立ちます。
メリット(3)変化への適応力が強化される
組織開発により、環境変化を察知し、迅速に対応する組織能力が向上し、AI・DX時代やポストパンデミック時代の不確実性に対する適応力が大幅に強化されます。
2025年現在、企業は出社回帰、AI技術の急速な発展、働き方の多様化など、かつてない速度での変化に直面しています。
変化に強い組織では、新制度や新技術の導入がスムーズに進みやすく、現場での受け入れも高まりやすくなるのです。
現場の声が届く仕組み、部門間の情報共有と意思決定ルール、試行を歓迎する文化を整えることで、外部変化を脅威ではなく機会として捉えられるようになります。
メリット(4)人材定着率が改善される
組織開発により職場の人間関係と働きがいが向上することで、任意離職率が大幅に減少し、優秀な人材の定着率が改善されます。



2025年の転職市場では、候補者がリモートワークやフレキシブルな働き方に加えて、職場の人間関係の質、成長機会の豊富さ、心理的安全性を重視する傾向が強まっています。
画面越しでは先輩の仕事ぶりや組織の雰囲気を感じ取りにくく、入社2-3年目の若手から成長を実感できないという声が上がっている現状に対し、組織開発を実施した企業では任意離職率の改善が見られる事例もありますが、要因は複合的です。
メンター制度の充実、1on1による個別支援、キャリア開発の機会提供により、採用・育成コストの削減と組織の知識継承が実現されます。
組織開発に取り組むデメリット


この章では、組織開発に取り組む際に人事担当者が直面する可能性があるデメリットや課題について紹介します。
2025年のハイブリッドワーク時代において、組織開発の重要性は高まっていますが、一方で慎重に検討すべきリスクも存在します。
- 中長期的な取り組み特性による即効性の期待とのギャップ
- 多様な働き方ニーズを持つステークホルダーとの合意形成の困難さ
- 専門的な知識やスキル習得に必要な投資コストの負担
- 不適切なフレームワーク選択による組織への悪影響リスク
デメリット(1)効果が出るまでに時間がかかる
関係性や文化に働きかける性質上、効果の可視化までには一定の時間がかかります(目安は組織規模や施策により変わります)。



特に2025年現在の変化の激しいビジネス環境では、即効性のある施策が優先されがちで、組織開発への継続的な投資が後回しにされるリスクがあります。
心理的安全性や信頼の形成は段階的です。
リモート中心の場合、自然な交流が減り、時間がかかりやすい点を考慮します。
エンゲージメントスコアや離職率などの成果指標の改善には数ヶ月の時間を要するため、短期的な成果を求める経営層や現場からの理解を得ることが困難な場合があります。
デメリット(2)経営層や現場の合意形成が難しい
関係性や文化といった無形領域を扱うため、ROI(投資対効果)を説明しにくく、予算確保や現場の協力を得づらいことがあります。
一方で、出社回帰の動きとリモート志向が併存し、両者のギャップが合意形成を難しくする場面があります。
経営層は具体的な数値目標と短期的なROIを重視する傾向があり、「関係の質」向上や「心理的安全性」構築といった定性的な目標への投資判断に躊躇する場合があるのです。
現場に追加負荷がかかると、「また新しい施策か」と受け止められる恐れがあります。
負担配分とメリットの見える化が重要です。
デメリット(3)コストやリソースが必要になる
組織開発には専門的な知識を持つ人材の確保、外部コンサルタントの活用、従業員の時間投資など、多岐にわたるコストとリソースが必要です。
組織開発コンサルタントの起用には、サーベイツール、ファシリテーション研修、1on1やワークショップの時間確保など、さまざまなコストが発生し、相場は契約形態・範囲・規模で大きく変動します。
1000名規模では、年間で相応の時間投資が発生します。機会費用も含め、コストは事前に見積もりをしましょう。
また、人事担当者自身も組織開発の専門知識を習得する必要があり、セミナー参加や書籍購入、場合によっては大学院での学習などの自己投資も必要となります。
デメリット(4)誤った手法選択による逆効果のリスク
組織開発には多様なフレームワークと手法が存在するため、自社の課題や組織文化に適さない手法を選択した場合、従業員の混乱や抵抗を招き、かえって組織の結束力や信頼関係を損なう逆効果が生じるリスクがあります。
OKRや7S、タックマン、成功循環などは前提や適用場面が異なります。
現状把握をせずに導入すると、現場と合わず効果が出にくくなってしまうのです。
心理的安全性が十分でない状態で、急にオープンな対話を求めると緊張が高まりやすく、リモート中心の職場で対面前提の施策だけを行うと、参加しづらい人を生む恐れがあります。
組織開発の基本的な進め方


この章では、失敗を避けつつ成果につなげる進め方を、ハイブリッドな働き方に合わせて説明します。
2025年のハイブリッドワーク時代において、従来の組織開発手法を現代の働き方に適応させた実践的なアプローチが求められています。
- データに基づく現状分析と課題の特定
- 働き方多様化を前提とした目標設定と計画策定
- リスクを最小化する90日サイクルでの小規模実験
- 効果測定と継続改善による持続的な組織変革
手順(1)現状把握と課題の明確化
組織開発の成功は、正確な現状把握から始まります。
2025年現在では、従業員サーベイ、1on1インタビュー、行動データ分析を組み合わせることで、リモートワーク環境下でも客観的な組織の実態を把握できます。
Job総研の2025年1月の調査によると、従業員の55.3%がリモート派を希望する一方で、企業の51.9%で出社回帰が進んでいる現状では、働き方に関する価値観の相違やコミュニケーションの質の変化を正確に測定することが必要です。
心理的安全性、会議満足度、意思決定の速さ、越境プロジェクト参加率などを、5〜12問程度の短いサーベイで測定します。7Sなどの枠組みで整理し、ヒートマップ(色分け図)で優先順位を可視化しましょう。
影響度と実行容易度のマトリクスで優先課題を3件ほどに絞ると、着手しやすくなります。
手順(2)目標設定と計画立案
組織開発の目標設定では、先行指標と遅行指標を組み合わせた測定可能なKPI設計が成功の鍵となります。
会議の発言回数、意思決定リードタイム、部門横断プロジェクト数などの先行指標と、エンゲージメントスコア、離職率、業績指標などの遅行指標を明確に設定し、90日サイクルでの段階的な目標達成を計画することが必要です。
具体例として、先行指標(会議時間の削減、意思決定の迅速化、越境PJ数の増加)と、遅行指標(エンゲージメントの改善、離職率の低下)を組み合わせて設定します。
OKRなどを使って四半期ごとの目標を設定すると、短期の進捗を見せながら継続投資の理解を得やすくなりますよ。
手順(3)小規模での試行と検証
組織開発では大規模な変革を行う前に、限定された範囲での小規模実験を通じてリスクを最小化し、効果を検証することが重要です。
90日サイクルでの実験を推奨し、仮説設定、対象選定、介入実施、効果測定、中止判断基準を明確に設定したパイロットプロジェクトを実施します。
会議リデザイン実験では特定の部門(20-30名程度)を対象に、グラウンドルール設計を導入し、3週間継続して効果を測定します。
測定項目として会議時間、発言回数、参加者満足度、意思決定までの日数を設定し、「改善が小さい場合は見直し、再現性が確認できたら拡張」といった判断基準を、事前に合意しておきましょう。
実験は「失敗から学ぶ場」であることを事前に共有し、安心して試せる環境をつくります。
手順(4)全社展開と継続的改善
小規模実験で効果が検証された手法を全社展開する際には、段階的なロールアウト、変化管理、継続的な効果測定、制度との整合性確保が成功の要因となります。



成功した部門のメンバーをチェンジエージェントとして巻き込み、四半期ごとに段階的に広げましょう。
制度接続の例として、役割再定義の結果を人事評価項目に反映させ、越境プロジェクトの参加実績をキャリア開発の要素に組み込みます。
効果測定では、ダッシュボードを構築して指標を可視化し、月次で経営層に報告します。
組織開発を人事制度改訂と同時並走させることで、役割、会議、評価制度の整合性を確保し、矛盾による混乱を防ぐことができるのです。
また、撤退・縮小の条件もあらかじめ決め、期待値を大きく下回る場合は方針転換します。
組織開発で使える手法・フレームワーク


この章では、2025年のハイブリッドワーク時代に効果的な組織開発の手法・フレームワークについて紹介します。
対面中心のやり方は、オンラインやハイブリッドでも使えるように工夫しましょう。
- 組織の方向性統一と価値観共有のための基盤構築手法
- 個人の成長支援と信頼関係構築のためのコミュニケーション手法
- 多様性を活かした対話と未来志向の合意形成手法
- 目標管理とチーム発達段階に応じた組織運営手法
手法(1)ミッション・ビジョン・バリューの策定
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、方向性をそろえ価値観を共有するための基盤です。
多様な働き方でも判断基準を合わせやすくなります。
従業員の55.3%がリモート派を希望する一方で、企業の51.9%で出社回帰が進んでいる現状では、物理的な距離や働き方の違いを超えて組織の結束力を維持するため、明確な価値観の共有が必要です。
MVVは組織の存在意義(ミッション)、目指すべき姿(ビジョン)、行動指針(バリュー)を定義することで、意思決定の基準を提供し、従業員のエンゲージメント向上に直結します。
策定時は、経営だけでなく現場の声も取り入れましょう。
部門横断のワークショップやオンラインでの意見収集が役立ちます。
手法(2)1on1面談とコーチング手法
1on1やコーチングは、成長支援と信頼関係づくりに有効です。
ハイブリッド環境でも、短い頻度高めの対話が効果を発揮します。
オンライン中心だと、先輩の働き方や職場の空気がつかみにくいことがありますが、定期的な個別対話は、課題の早期発見と支援につながるのです。
1on1は、週次15〜30分など無理のない頻度で、今週の振り返り・困りごと・次週の約束・SBI(状況・行動・影響)に沿ったフィードバックで進めます。
コーチング手法では、オープンクエスチョンを活用した自発的な気づきの促進、傾聴による心理的安全性の確保、目標設定と振り返りによる成長の可視化を重視します。
手法(3)ワールドカフェとフューチャーサーチ
ワールドカフェとフューチャーサーチは、2025年の多様性が重視される組織環境において、異なる立場や価値観を持つメンバーが対等に対話し、創発的なアイデア創出と未来志向の合意形成を実現する強力な組織開発手法です。
雇用の流動化で経歴や年齢がまったく違う社員が同じ仕事をするケースが増えている現状では、多様な背景を持つメンバー間での効果的な対話が組織力向上の鍵となっています。
ワールドカフェは、4〜6名の小グループで20〜30分の対話を複数ラウンド行う手法です。自由に話せる場づくりで心理的安全性を高めます。
フューチャーサーチは、関係者が一堂に会して「過去・現在・未来」を連続して対話し、行動計画まで合意する大規模対話の手法です。
手法(4)OKRとタックマンモデル活用
OKR(Objectives and Key Results)とタックマンモデルを併用すると、目標の明確化とチーム段階に応じた関わり方を両立できます。
AI技術の急速な発展、働き方の多様化、出社回帰とリモートワークのギャップなど、短期間での環境変化への対応が求められる現状では、OKRの四半期ごとの短期サイクルでの目標設定と検証により、変化への迅速な対応が可能です。
タックマンモデルはチームの発達段階(形成期・混乱期・統一期・機能期・散会期)に応じた適切な介入を提供し、特にリモートワーク環境で形成が困難な信頼関係構築を体系的にサポートします。
実装例として、組織→部門→個人へ目標を連動させ、週次で進捗を確認、月次で軌道修正します。



短期成果と中長期の成長を両立できます。
組織開発を成功させるポイント


この章では、組織開発を成功に近づける実践ポイントを、ハイブリッド環境に合わせて整理します。
多くの企業で組織開発が形骸化や失敗に終わる中、成功企業に共通する実践的な要素を体系化しました。
- 経営層のコミットメント(目的共有・定例レビュー・資源配分)
- 現場の当事者意識を醸成する参加型アプローチと合意形成
- 短期的な成果期待を乗り越える長期視点での持続的取り組み
- データドリブンな効果測定と継続的改善サイクルの確立
ポイント(1)経営層のコミットメントを得る
組織開発の成功において最も重要な要素は、経営層の本気のコミットメントと継続的な関与です。
失敗要因として多いのは、トップの関与が形式的にとどまるケースです。
承認だけでなく、定例のレビューや障害除去までを役割に含めましょう。
成功例では、CEOなど経営がパトロン役となり、定例レビューや進捗共有を習慣化しています。



経営向け資料では、課題・機会・投資対効果・計画・必要な支援を簡潔に示し、定例レビューの設定を依頼しましょう。
ポイント(2)現場の巻き込みと参加促進
組織開発の成功には、現場の従業員がやらされ感ではなく当事者意識を持って参加することが不可欠です。
2025年のハイブリッドワーク環境では、リモートワーク派(55.3%)と出社派との意識ギャップがある中で、「また新しい施策か」という疲労感を克服するため、従業員が設計段階から参加できる仕組みをつくり、「やらされ感」を減らしましょう。
具体的な手法として、設計段階での部門横断ワークショップの実施、反対意見を持つ反対勢力の早期関与、パイロットプロジェクトでの検証責任者としての小役割付与を行います。



「多様な働き方を前提に設計している」ことを明確に伝え、短期間での成功体験を先に作ると参加が続きやすくなります。
ポイント(3)長期的視点で継続的に取り組む
組織開発は一時的な施策ではなく、組織文化や関係性の根本的変革を目指す長期的な取り組みであり、6ヶ月から2年程度の継続的な投資と忍耐強い実行が成功の前提条件です。
心理的安全性の構築、信頼関係の醸成、新しいコミュニケーション文化の定着には本質的に時間を要し、特にリモートワーク環境下では対面での自然なコミュニケーション機会が限られるため、さらに長期間のアプローチが必要です。
90日程度の小さなサイクルで試し、学び、広げる流れを回しましょう。
年次では「診断→設計→パイロット→検証・改善→拡張」を計画します。
ポイント(4)効果測定と改善を繰り返す
組織開発の成功には、客観的で測定可能な効果測定の仕組みと、データに基づく継続的な改善サイクルの確立が不可欠です。



無形の領域を扱うため効果測定が難しく、投資の説明がしづらい点が継続支援の壁になりがちです。
先行指標(会議の発言回数、意思決定リードタイム、越境プロジェクト数、1on1実施率、など)を週次・月次で測定し、遅行指標(エンゲージメントスコア、離職率、業績指標、など)を四半期・半期で追跡します。
※先行指標や遅行指標などのKPI設計は傾向データであり、自社ベースラインとの比較が必要です。
5〜12問程度の短いサーベイ、カレンダー連携の自動集計、簡易ダッシュボードを使い、月次レビューと四半期の見直しで改善サイクルを回します。
内製か外部支援かの判断基準


この章では、内製と外部支援の選び方を、判断の軸ごとに整理します。
多くの人事担当者が悩むコスト効率と効果のバランス、そして現代特有の課題に対応するための戦略的な選択指針を体系化しました。
- 情報の機密性と組織内政治の複雑さを考慮した外部関与レベルの決定
- 社内の人材スキルと時間的制約から導く現実的な実行可能性の評価
- 内製と外部支援の利点を組み合わせた柔軟なハイブリッド運用戦略
判断基準(1)機密度と政治的難易度による判断軸
判断の軸は、以下の3点です。
- 情報の機密度
- 社内の政治的難易度
- スキルと時間の余裕



出社回帰とリモート志向が併存するなかでは、中立的な第三者が関与すると合意形成が進みやすい場面があります。
従業員の本音、経営層への不満、部門間の対立など、センシティブな情報を扱う場面では、社内担当者では聞き出せない内容が存在します。
機密度と政治的難易度で整理すると、低い領域(例:会議の改善、1on1)は内製しやすく、高い領域(例:経営の意思決定、組織再編)は外部の方が進めやすい場合があります。
機密情報の扱いは、事前に合意しましょう。
判断基準(2)社内リソースと期限から見る選択基準
組織開発の実行方法選択において、社内の専門スキル保有状況と期限制約は決定的な要因となります。
専門人材が限られる場合、外部費用と内製の学習・時間コストを並べて比較し、現実的に評価しましょう。
ファシリテーションやコーチング、データ分析などのスキルを一から身につけるには時間がかかります。
スキル・時間・期限の3視点で判断し、短期は外部活用、中期は併用、長期は内製化へと段階的に移行する設計が有効です。
判断基準(3)ハイブリッド運用という第三の選択肢
2025年の組織開発における最適解は、内製化と外部委託の二者択一ではなく、両者の利点を活かしたハイブリッド運用です。
診断・設計は外部の専門性、実行・定着は内製といった分担により、コストと効果の両立がしやすくなります。
内製のみだと専門性やスピードが不足し、外部のみだとコストや定着に課題が出やすいもの。
外部診断×内製実行など、役割を分けて組み合わせると効果的です。
外部パートナーは、知識移転やスキル育成の姿勢を重視して選びましょう。
計画的に内製化へ移行できるかを評価します。
まとめ


本記事では、組織開発の基本概念から、具体的な進め方、成功のポイントまでを網羅的に解説しました。
しかし最も重要なのは、現状を正確に把握し、特定チームでの小さな試行と検証を繰り返しながら、着実に成功体験を積み重ねることです。



まずはこの記事で紹介したロードマップを参考に、自社の課題整理と関係者との対話から、明日からできる第一歩を踏み出してみましょう。
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