「社員が働きすぎなのではないかと気になっている」「残業時間の多さから離職を考えている社員がいる」などの悩みを抱えていませんか?もしかすると「勤務間インターバル制度」の導入でその悩みを解決できるかもしれません。
社員のワークライフバランスを重視することは、会社にもたくさんのメリットを与えてくれます。社員の健康は会社の経営や維持にかかわるのです。
「勤務間インターバル制度」について理解を深めることで、長時間労働の改善策を見いだしましょう。
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勤務間インターバル制度とは
「勤務間インターバル制度」とは仕事がおわってから、翌日の仕事がはじまるまでに一定の時間を確保することを言います。目的は働く人の生活時間や睡眠時間を保障するためで、働きすぎを防止します。現代の日本は働きすぎによる「過労死」が社会問題とされています。労働時間を減らし働く人のプライベートな時間を確保することはワークライフバランスを保つことにもつながっているのです。
インターバル制度の定義
インターバルとは「間隔」、「あいま」という意味を持ちます。これを勤務間にあてはめると、退勤してから翌日の始業までに必ず一定の休息時間を確保することです。
いまを生きる働く人たちは朝早くに出勤し、夜中まで残業する人が少なからずいるという厳しい現実があります。そういった人たちに休息時間を確保することは、心身ともに休む時間をつくることができるため、働く人の健康維持につながっていくのです。
そのために、残業をした翌朝の出勤時間を遅らせたり、決まった時間以降の残業を禁止したり、会社には柔軟な働き方への対応が求められることになります。「勤務間インターバル制度」は休息時間を確保する必要があるのです。
勤務時間インターバルの意義
勤務間インターバル制度は、働きすぎによる過労死などの防止が目的とされています。言い換えると、労働時間を短くすることで労働者の健康を守るということです。長時間労働は、心身ともに疲労を蓄積させるため、健康を害したり過労死を引き起こしたりする要因のひとつとされています。
EU(欧州連合)では、1993年制定、2000年に「EU労働時間指令」が改正され、24時間につき最低連続11時間の休息期間を付与するなど労働時間について細かく定められました。国として働き方について方針を定めることで、労働時間が減少しワークライフバランスを保てているのです。
勤務間インターバル制度の義務化
日本でも2019年4月に「労働時間等設定改善法」が改正により、「勤務間インターバル制度」を努力義務として導入するよう事業主に求められました。日本ではまだこの制度を導入している企業は少なく、厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によると導入率はいまだ4.6%にとどまっており、まだこの制度が浸透していないという現実があります。
もちろん強制ではないため、導入していないからといって会社が処罰を受けることはありません。しかし働き方改革が求められているいま、いつ導入が義務化されてもおかしくないでしょう。
労働基準法における11時間インターバル
厚生労働省では11時間以上のインターバルをあけることを推奨しています。厚生労働省の助成金「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」を見ても明らかです。インターバル時間としては基準が2つあり、9~11時間未満と11時間以上に分けられているのですが、助成金に差が生じています。
〈助成金の上限〉
休息時間 | 新規導入の場合 | 適用範囲の拡大・時間延長の場合 |
9~11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
働く人の休息時間を確保することには多くのメリットがあります。後ほど導入の効果について詳しく解説しますが、助成金がもらえるのもひとつのメリットと言えますね。
参考:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
厚生労働省の指針
厚生労働省では以下の通り指針を定めています。
勤務間インターバル(前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することをいう。以下同じ。)は、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るために有効であることから、その導入に努めること。なお、当該一定時間を設定するに際しては、労働者の通勤時間、交替制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、仕事と生活の両立が可能な実効性ある休息が確保されるよう配慮すること。
引用:労働時間等設定改善指針
あくまでも導入については「努めること」とされているので強制ではありませんが、休息時間の確保について配慮することが重要であると読み取ることができます。
勤務間インターバル制度の罰則
日本ではまだ勤務間インターバルの導入が強制ではないので罰則は設けられていません。現在制度を導入している企業も特に罰則は設けていませんでした。
株式会社岩田屋三越の-総合企画部 人事・人財開発担当 マネージャー 大神 貴夫さんは以下の通り罰則を設けていない理由についてインタビューで回答しています。
Q.制度が守れない場合はどうしていますか?
「クリスマス・年末年始、決算期など、小売業の繁忙期や、季節催事の売り場の変更、また警備上の理由でテ ナントの作業に立ち合う必要があるときなど、勤務間インターバルをどうしても確保できない時期があります。 そのため、確保できなかったときの罰則は設けていません。その売り場の責任者が、従業員の勤務時間を把握して、勤務間インターバルを確保できなかった翌日は、該当者が所定内の時間で退勤できるように仕事の調整を行う形で対応しています。」
引用:勤務間インターバル制度 導入事例集
違反時のペナルティ
先にも述べましたが、日本ではまだ勤務間インターバルの導入制度が義務化されていないので、違反時のペナルティも設定されていません。もし設定を考えているのであれば各会社ごとにペナルティを定める必要があります。
企業への影響
もし社員が決まりを守らず、各会社で定めたペナルティを受けることになったとしても社内で話がまとまるのであれば問題はないと言えるでしょう。ただ、それが外部に漏れて「あの会社は勤務間インターバル制度の導入をうたっているのに守れていないらしいよ」なんてうわさが広まってしまえば、会社の信頼度を下げてしまいかねません。
勤務間インターバル制度の効果と課題
厚生労働省ではインターバル制度の導入で以下の効果が期待できるとしています。
- 従業員の健康の維持・向上
- 従業員の確保・定着
- 生産性の向上
従業員の健康を大切にすることは、従業員の確保につながり、生産性の向上に直結しているというのです。
ここでは勤務間インターバル制度の効果と課題についてまとめています。
労働者の健康と働きやすさの向上
まずは勤務間インターバル制度の導入による効果についてです。
- 休息時間の確保は健康維持に関係している
厚生労働省が発表している調査によると、インターバル時間が12時間未満であると起きたときの疲労感への影響があること、11時間未満の日が数日でもあると翌月の病気休暇日数の増加につながっているとの結果報告がありました。健康を維持するためにも、インターバル時間は重要だということがわかります。
- インターバル時間の確保で働きやすさをアピール
毎日インターバル時間が確保できれば、自分の時間として毎日を充実させることができます。趣味や育児、友人と食事など好きなことをする時間が増えるのです。現状インターバル制度を取り入れている企業は少ないので、いま働いている従業員にとっても魅力的な制度と言えます。さらに、制度を導入することで求職者へワークライフバランスがとりやすく働きやすい会社であることをアピールできるでしょう。
企業の対応と労働管理上の課題
しかしながら、インターバル制度の導入には課題もあります。
- 役員層の説得
インターバル制度の導入について検討したとき、中には会社がまわらなくなってしまうのではないか、決まりを守らない労働者にはどういった対応をすべきかという意見がでる可能性があります。生産性の向上などのメリットを根気よく伝えていくことで、否定的な意見を打開しましょう。
- 労働管理が煩雑化する
インターバル制度を導入すると労働時間の管理が煩雑化します。Aさんは昨夜22時まで働いたから今日は9時出勤、Bさんは昨夜23時まで働いているから10時出勤……。などというように、これまでアナログ管理していた会社にとっては、非常に管理しづらくなるため人事担当者から不満の声があがる可能性があります。インターバル制度の導入時にはあわせて、勤怠管理システムの導入もおすすめします。
勤務間インターバル制度に関するよくある質問
勤務間インターバル制度に通勤時間は含まれますか?
勤務間インターバル制度については、特定の業界や組織での詳細な規則が異なる可能性があります。通常、この種の制度は、一日の仕事の間に指定された休憩時間を設けることを目指しています。
しかし、通勤時間がそれに含まれるかどうかは、具体的な法律や規定には明確に定められていません。通常、通勤時間は勤務時間とは別に考えられ、インターバル制度の一部とは見なされません。これは、従業員が勤務地点に到着してから、指定された休憩を取るまでの間を勤務時間と見なすためです。
勤務間インターバルは最低何時間?
勤務間インターバル、または休憩時間についての規則は、企業によって異なります。しかし、一般的な基準として、多くの国や地域では、一定の時間以上働いた場合には定められた時間の休憩を取ることが法律で義務付けられています。
例えば、日本では労働基準法により、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を取ることが義務付けられています。
インターバル勤務は義務ですか?
日本の労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を取ることが必要とされています。しかしこれはすべての職業において共通の規則ではありませんが、決めた規則を守ることはどの業種でも義務として定められています。
休憩時間の具体的な取り方やスケジュールについては、企業の内部規則や労働契約によって詳細が定められることが多いため、会社の労務にご自身の勤めている業界・企業での業務間インターバル制度について確認するのがおすすめです。
勤務間インターバル制度を活用しよう
勤務間インターバル制度は、一定の休息時間を確保することで働く人にも会社にもメリットを与えてくれます。健康に働くことができればそのぶん生産性は向上し、会社の利益向上にもつながるのです。
安心して健康に働くことができれば、会社は働く人から重宝されるようになります。会社は働く人を大切にし、働く人は会社を大切にする……。そんな関係になれれば、会社はさらに発展していくでしょう。
働く環境を少しでも良くしたいと考えているのであれば、ぜひ勤務間インターバルの導入を検討してみてください。
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