「つながらない権利」という言葉を聞いたことはありますか?私たちが日々働くにあたって欠かせない、パソコンやスマートフォンは本当に便利なものです。
しかし、この便利さがゆえに働きすぎにつながっているかもしれません。
いつでもどこでも仕事ができるようになって、会社も社員もメリットが大きいリモートワーク。一方でプライベートと仕事でメリハリをつけにくくなっていることも問題視されています。
ここでは現代社会で求められている「つながらない権利」について解説します。
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つながらない権利とは
「つながらない権利」とは、勤務時間外の仕事に関する電話やメールを拒否できるという権利のことです。
これは企業や組織に対して連絡してはいけないという指示ではなく、あくまでも労働者が拒否できる権利があることを保障しています。フランスで2017年1月に労働法が改正された際に「従業員50人以上の企業では、勤務時間外の連絡を遮断する権利を持つ」と定款に記載することが義務付けられました。
これがきっかけとなりいま世界中で「つながらない権利」について議論、法制化され注目を集めています。現状日本では2021年3月に厚生労働省が「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を改訂しましたが、注意喚起のみで強制力はありません。
テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外等に業務に関する指示や報告がメール等によって行われることが挙げられる。このため、役職者、上司、同僚、部下等から時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等が有効である。メールのみならず電話等での方法によるものも含め、時間外等における業務の指示や報告の在り方について、業務上の必要性、指示や報告が行われた場合の労働者の対応の要否等について、各事業場の実情に応じ、使用者がルールを設けることも考えられる。
参照:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン000759469.pdf (mhlw.go.jp)
つながらない権利が重要な理由
コロナ全盛期、外出制限がかかり「できるだけ自宅にいるように」と緊急事態宣言がだされてからリモートワークができる企業が増えました。
いつでもどこでも仕事ができる環境が整い便利になった半面、おかげで仕事とプライベートの線引きがあいまいになってしまっています。すぐに連絡が取れてしまうので、時間外でも「業務連絡が来ているのではないか」「先方にメールしておこうかな」などと頭のどこかで考えてしまい、休息に専念できずいつのまにか長時間労働してしまっているのです。
実際に新婚旅行中に業務連絡があり、急に顧客対応する羽目になったため旅行プランが崩れ夫婦喧嘩となってしまったという話もあります。
人生で1回しかない重要なイベントごとですら優先できないのは、自分も家族も悲しい思いをします。勤務時間外や休暇中は仕事を忘れて心も体もリフレッシュできれば、集中力をもって業務に取り組む事ができます。
つながらない権利を尊重するメリット
休息時間の確保
一番のメリットは「労働者の休息時間の確保ができること」です。仕事とプライベートの時間が区別されていないことで、労働者は精神的にストレスが蓄積されていきます。就業時間外であっても連絡が取れなければ迷惑がかかってしまう、責任感がないと思われてしまうと思い込んでいる人は少なからずいるでしょう。
いつもなんとなく仕事のことを考えてしまっていては質の高い休息は取れません。しっかりとオン・オフの切り替えを行い質の高い休暇を過ごすことで、やる気がみなぎり、生産性の向上やモチベーションアップが期待できます。
リモートハラスメントの防止
リモートハラスメントとは、在宅ワークが普及してできた新しいハラスメントです。具体的には在宅ワーク中に受けるセクハラやパワハラ、モラハラのことを指します。
例えば、リモート会議のときに画面内に映り込む部屋を見て「部屋をもっと見せてよ」と言ったり、休憩中にモニターの接続を強要したりすることはハラスメントに該当します。たしかにリモートワーク中は本当に働いているのかが目に見えないため、管理したくなる気持ちはあると思いますが、行き過ぎた監視行為には注意が必要です。
上司は部下のことを信用し、自宅勤務での作業は完全に個人に任せるといったマインドを持つことが大切です。つながらない権利の導入は、こうしたリモートハラスメントの防止にも効果的だと言えます。
つながらない権利を実現する方法
つながらない権利を会社に導入するためにはどのようにステップを踏めばよいのでしょうか?
つながらない権利をいざ導入したとして、会社の運営に支障が出てしまっては大問題です。ここでは実現できるまでの3ステップを紹介します。
体制を作る
まずは体制作りが重要です。上層部からつながらない権利について深く理解する必要があります。休日も連絡があれば対応するのがあたりまえだという風潮がある会社は、特に上層部の考えが変わらなければ、下で働く労働者を変えることはできません。
また、日本では法整備が整っていないため各企業で規定を考えなくてはなりません。そのため、だれが見てもわかるように具体的にマニュアルを作成する必要があります。
例えば「勤務時間外にメールがあった場合は翌営業日の午前中に返信対応を行えばよい」、「担当者が休暇中の電話連絡は翌出勤時の折り返し連絡となることを伝える」など、社内全体に規定を周知しておくことで休暇中の担当者に連絡する必要がなくなります。つながらない権利を保障するためには、まずは上層部の意識改革、そして社内で働く人たちの理解が大切です。
オンコール拒否
オンコールとは、医師や看護師などの医療従事者が勤務時間外であっても連絡があればいつでも出勤できるように待機しておくことです。
患者の急変や救急搬送時などに呼ばれるため、30分以内に到着できる場所にいる必要があります。しかしオンコール待機をしていれば、常に緊張感を持って過ごさなければならないため心から休むことはできません。
解決法としては、オンコール待機時間の代わりの労働者を雇うことですが、働き手が少ない現状ではなかなか雇用を増やすのは難しい一面もあります。
社内ルールを守らせるには
社内でルールを徹底させるには、わかりやすい社内規定の作成・周知、上層部がつながらない権利を行使することです。
特にはじめのうちは、これまでの風潮により業務時間外でも担当者へ連絡してしまいそうになると思いますが、上司が連絡することをきっぱりと制止しましょう。どうしても連絡したいことがある場合には、その担当者の直属の上司に相談し許可を得るなど、連絡しづらいと思わせることが大切です。
万が一、部下から休暇中に連絡があった場合には翌出勤日の朝礼などであらためて「休暇中の連絡は禁止」であることを伝えると、つながらない権利が社内によりはやく浸透するでしょう。
企業でのつながらない権利の取り組み事例
- 三菱ふそうトラック・バス
2014年12月から長期休暇中の社内メールの受信拒否・自動削除ができるシステムを全社員に導入しました。メールの送り主には後日メールを再送信するようメッセージが自動送信されます。連休後にたまったメールを処理する時間を削減することで、労働者の負担を軽減し業務効率化につなげているそうです。
- イグナイトアイ
業務時間外や土日祝などの休暇中は仕事に関する電話やメールを禁止することにしました。取引先には時間外対応はできないと事前に知らせ、メールが届いたとしても自動返信で休暇中であるとメッセージが送られるように設定してあります。その効果は会社の売り上げが4割増となったそう。勤務時間外はしっかりリフレッシュすることで労働者の仕事への意欲は向上し、生産性が高まったそうです。
繋がらない権利に関するよくある質問
つながらない権利ハラスメントとは?
「つながらない権利」は、デジタル化が進む現代社会において、インターネットや電子メール、SNSなどの連絡ツールから一時的に離れる権利を指す概念です。働き方改革やワークライフバランスの観点から、特に仕事のコミュニケーションにおいて注目されています。
この権利が尊重されないと、例えば休日や休暇中、または勤務時間外にも関わらず職場からの連絡を受けることを強いられるといった状況が生じます。これは、個人のプライベート時間を侵害し、精神的なストレスを引き起こす可能性があります。
企業や組織は、労働者の健康やワークライフバランスを保つため、労働時間外の連絡に制限を設けるなど、「つながらない権利」を尊重する取り組みが求められます。
時間外の電話は繋がらない権利ハラスメントに該当する?
「つながらない権利」については、各国や各組織で具体的な定義や対応が異なりますが、原則として、労働時間外や休日に対する業務連絡は「つながらない権利」を尊重する観点から制限または禁止されるべきであり、その原則を破る行為は「つながらない権利ハラスメント」に該当すると考えられます。
ただし、具体的に何がハラスメントに該当するかは、業務内容、緊急性、職種、業務上の必要性、企業文化、そして労働契約などの様々な要素により左右されます。また、この問題は個々の職場のルールや国や地域の労働法規、さらには文化や社会規範にも影響されます。
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