リスキングとは？人材育成への効果や導入の方法・DXの実現について紹介

「リスキリング」という言葉を知っていますか？

働き方の変化に伴い、耳にしたことがあるという方も多いことでしょう。しかし、「リスキリングとは何か」について、詳しく説明できる方は少ないのではないでしょうか。

この記事では、「リスキリング」という言葉の意味や、リスキリングの効果、導入方法や、リスキリングに伴うメリットやデメリットについて解説しています。

この記事を読めば、リスキリングを導入するときの注意点や、リスキリング導入の具体的なイメージを掴むことができますよ。

リスキリングについて知りたい方や、リスキリングの導入を検討している方は、ぜひチェックしてください。

リスキリングとは？

まずは、そもそもリスキリングとはどういった意味なのかを確認しておきましょう。

リスキリングは、「Reskilling」という英語が元になった言葉です。カタカナ言葉として字面だけを見てもイメージがつきにくいかもしれませんね。英単語を「Re – Skill – ing」と分解してみると意味が分かりやすいのではないでしょうか。

「Re」は、「再び」や「繰り返し」という意味を持つ接頭語、「skill」は日本語としても使われる「スキル」と同じで「わざ」や「技術」という意味を持っています。「ing」は英語の現在分詞ですね。

つまり、「リスキリング＝Reskilling」という言葉は、「再び技術を身に着けること」「スキルの再習得」と言った意味になります。

それでは、言葉の意味を確認したところで、改めてリスキリングとは何かについて確認していきましょう。

  リスキリングの定義

リスキリングは、主にビジネス分野において「スキルの再習得」、転じて「働き方や情報社会の変化によって、今後必要となるであろうスキルを身に着けること」を指します。働き手が新しいスキルや知識を習得し、現代のビジネスに適応するための取り組みです。

世界的な新型コロナウイルスの流行により、働き方の見直しやテクノロジーの活用が急務となった現代社会において、新しい技術や知識を学び、ビジネスに活かしていくことが競争社会を生き抜く重要な要素となりました。リスキリングは、企業や組織の成長を促す手法の一つとして注目されているのです。

  リスキリングの目的

リスキリングの目的は、ビジネスにおける技術や知識の向上、アップデートを行い、新しい働き方への適応と組織の生産性や競争力の向上を両立させることです。

リスキリングを行う目的として、具体的には以下のようなものが挙げられます。

• IT技術の進化や業界の変化に対応するためのスキル習得
• 従業員のキャリア成長と満足度の向上
• 生産性の向上
• 組織のイノベーションと競争力の維持

リスキリングを行う目的は様々ですが、「新しいスキルを身に着けること」「新しいスキルを活かして仕事を効率的に発展させること」が大きな目標と言えるでしょう。

  リスキリングの重要性

リスキリングは、技術革新の目まぐるしい現代のビジネス環境において、生産性や効率を維持・向上させる重要な要素です。

急速に変化するテクノロジーや市場の要求に対応するためには、新しい技術や働き方、市場の変化に対して柔軟性を持ち、新しいスキルを習得する必要があります。リスキリングを行うことで、現代社会に対応したイノベーティブなビジネスパーソンの育成にもつながると言えるでしょう。

また、個人においても、AIやロボットに仕事を奪われ、技術的失業に陥らないために、技術を使う側としてのスキルを磨くことが重要になります。これからの社会で仕事を得るために、リスキリングは欠かせない要素なのです。

リスキリングの方法と効果

ここからは、リスキリングの方法とその効果について解説します。

「リスキリングが大切なことはわかったけれど、実際何をすればいいかわからない」という方は、ぜひチェックしてください。

  リスキリングのやり方

リスキリングの詳細な手順は様々ですが、ここでは、例として大まかな流れを一つ挙げてみます。

1. スキルマップの作成
2. リスキリング計画の策定
3. スキルの習得と実践
4. 成果の評価と修正
5. 業務上での実践

リスキリングを行う上で重要なのは、組織内の協力体制を整えたり、リスキリング中のモチベーションの低下を防ぐ仕組みを作ることです。リスキリングを組織全体の課題と捉え、広くサポートできる体制を整えるようにしましょう。

  リスキリングの効果

リスキリングは、組織の生産性の向上や競争力の維持だけでなく、個人にも様々な効果をもたらします。

個人の業務の効率化により、ライフワークバランスの向上が望めるほか、昇進率の向上につながったというデータも。新しい技術やスキルの習得は、成果主義の現代社会においても非常に効果的な取り組みと言えるでしょう。

  リスキリングのメリットとデメリット

リスキリングには、ここまで挙げたようなメリットもありますが、実はデメリットや難点もあります。

リスキリングのデメリット・難点は以下の通りです。

• コストと時間の負担
• 変化への適応の難しさ
• リスキリングの効果の不確実性

しかし、リスキリングのメリットはデメリットを上回ることが多く、効果的なリスキリング戦略の導入は組織の成長と競争力強化に不可欠な要素です。

スキルマップとリスキリング

ここからは、リスキリングにおけるスキルマップの活用法について解説します。

リスキリングを成功に導くには、スキルマップの活用が鍵になります。ぜひチェックしてください。

  スキルマップの例

スキルマップは、従業員のスキルセットを可視化するためのツールです。よく用いられるスキルマップの項目には以下のようなものがあります。

• 技術スキル：プログラミング言語、データベース管理、ネットワーク管理など
• コミュニケーションスキル：プレゼンテーション、チームワーク、コーチングなど
• 問題解決スキル：分析力、クリティカルシンキング、創造性など
• リーダーシップスキル：戦略的思考、人材管理、意思決定など

スキルマップは従業員の現在のスキルセットと必要なスキルのギャップを可視化し、リスキリングの方向性を明確にするのに非常に重要な役割を果たします。

  ビジネススキルマップとリスキリング

ビジネススキルマップは、ビジネス関連のスキルセットを特定するためのマップです。ビジネススキルマップでは、リーダーシップ、プロジェクト管理、マーケティング戦略など、組織のビジネス目標に関連するスキルを評価します。

ビジネススキルマップとリスキリングの組み合わせは、個人や組織の競争力や成果を向上させるための重要な手段です。

リスキリングを行う際は、ビジネススキルマップを基に、不足しているスキルを特定し、それらのスキルを習得するためのプロセスを構築しましょう。ビジネススキルマップを活用することで、リスキリングの方向性や優先順位を定めるための基礎となるでしょう。

  人事部スキルマップとリスキリング

人事部スキルマップは、人事部門における必要なスキルを可視化し、把握するためのツールです。人事部の役割は多岐にわたり、採用、トレーニング、評価、労務管理など様々な業務を担当します。人事部スキルマップは、これらの業務に必要なスキルを明確にし、戦略的にスキルの習得や開発に取り組むことを可能にします。

人事部スキルマップとリスキリングは、人事部門が効果的に業務を遂行し、組織全体の人材戦略を支えるために欠かせない要素です。人事部スキルマップを作成し、リスキリングプランを策定することで、人事部門の専門性や能力を向上させることができると言えるでしょう。

技術スキルとリスキリング

  技術スキルの見える化とリスキリング

技術スキルの見える化は、組織や個人が保有する技術スキルを明確にし、把握するためのプロセスです。技術の進化は速く、多様なスキルが求められるため、技術スキルの見える化が重要になってきます。見える化により、組織は各人が持っている技術スキルを把握し、適切な人材配置やリソースの配分を行うことができるのです。

リスキリングを行う際は、技術スキルの見える化を基に、不足しているスキルを特定し、それらのスキルを習得するためのプログラムを取り入れましょう。技術の進歩や業界の変化に対応するために、組織や個人は常にスキルをアップデートし続ける必要があります。

技術スキルの見える化とリスキリングは、組織や個人の競争力を向上させるために欠かせない要素です。技術の進歩が速い現代において、適切な技術スキルの把握とリスキリングの実施を通じて、持続可能な成長と成功を実現することが重要と言えます。

  エンジニアのスキルマップとリスキリング

エンジニアのスキルマップは、エンジニアリング分野における従業員のスキルセットを可視化するためのツールです。

プログラミング言語、フレームワーク、データベース管理などの技術スキルだけでなく、問題解決能力やプロジェクト管理能力などのソフトスキルも含まれます。エンジニアのスキルマップに基づいてリスキリングが行われることで、エンジニアの能力向上と組織の技術的な競争力の向上が図られます。

  スキルマップの使い方

スキルマップを活用する際は、「未収得のスキル」だけでなく「習得済みのスキル」にも目を配るのがおすすめです。

新しいスキルを習得する際は、「習得済みのスキルの発展形を学ぶ・習得済みのスキルに近い分野のスキルを学ぶ」という形式を取る方が効率的だからです。まったく知らない分野の勉強をするより、理解度が上がりモチベーションの維持にもつながります。

ぜひスキルマップを有効活用して、リスキリングを成功に導いてください。

リスキリングの事例

ここからは、リスキリングを導入した企業の事例や、リスキリングで組織力が向上した成功事例を紹介します。

リスキリングは現代の変化するビジネス環境において重要な手段となり、組織と個人の成長と競争力強化に貢献すると言えるでしょう。リスキリングの重要性を認識し、適切な戦略とツールを活用してリスキリングを推進していくのがおすすめです。

富士通株式会社のリスキング事例

2020年度の経営方針において、富士通はデジタルトランスフォーメーション（DX）人材の育成と生産性向上を抜本的改革の一部として掲げました。社内業務改善だけでなく事業変革を目指し、リスキリングを利用したサービス強化と内部強化を推進しています。

さらに、2020年1月には、DX専門の子会社「Ridgelinez株式会社」を設立し、社外企業のDX推進も支援しています。これにより、富士通は日本全体のDX化を底上げしています。

株式会社日立製作所のリスキング事例

2019年9月のESG説明会で、日立製作所は「社会価値の創出を牽引する人財戦略」を発表し、その一部として「デジタル人財の強化」を計画しました。特に、DXサービス事業「Lumada」を支えるデジタル人材を2021年度に3万人規模に育成する方針を示しました。全国のグループ企業の従業員16万人全員に対してDX研修を実施し、日立アカデミーと連携して約100コースのデジタル研修プログラムを開発しました。そして、2020年度からはデジタルリテラシーの向上を目指す「デジタルリテラシーエクササイズ」の提供を開始しました。

まとめ

この記事では、リスキングについて紹介しました。

リスキリングは現代の変化するビジネス環境において重要な手段となり、組織と個人の成長と競争力強化に貢献すると言えるでしょう。リスキリングの重要性を認識し、適切な戦略とツールを活用してリスキリングを推進していくのがおすすめです。